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第46話 「桃色の髪」 ページ48

熱い、火のようだ。

目がそらせない。

この姫は、こんな顔をする姫だったか?

城にいた頃は幼く弱い、ただの少女に見えたのに。

今は何も持たぬ姫なのに。


「馬鹿…っ」

「なんで出て来た!?」


崖下からカナとハクの声が聞こえる。
後ろから来た兵をカナが槍で斬り捨てると、隣にいたハクの体がフラついた。


―――さっき受けた毒が…―――


その時、一人の兵がザッと真正面からハクを斬りつけた。
ぐらりと傾いたハク。
その体を支えきれなかった崖が崩れ落ちる。


『ハク!!』


Aが声を上げた時、ガシッとハクの手をカナが摑んだ。
片手にハクの手を摑み、もう片方の手は槍を崖に突き刺していた。


「カナ!」

「くっ…」


ハクの大刀が崖の下へと落ちていく。


「よし!下は奈落だ。雷獣と黒豹を落とせ!!」


テジュンが叫んだその言葉に、Aの目ががく然と見開かれた。


―――死んじゃう。

このままじゃ
このままじゃ
このままじゃ
ハクが
カナが
ハクが
カナが…

ハクとカナが―――


ドクンドクンとAの胸が脈打つと同時にAはテジュンの前を横切って走り出した。
テジュンの前を桃色の髪が通り過ぎる。


「姫!お待ちくださいっ」


テジュンの言葉になんて耳を貸さず、Aが2人の元に駆けよろうとすると、グイッとAの髪が引っ張られた。


『う…』


Aの長い髪を摑み上げるテジュン。


「いけませんよ、姫。あの男たちのもとへ行こうなど。あなたは私と共に城へ行くのだ」


Aは頭皮が引っ張られる痛みに顔を顰めた。
そしてテジュンの腰にささっていた刀をザッと抜き取ると自身の髪をその刀で切り捨てた。
唖然と自分を見るテジュンを睨みつけてAはハク達の元まで一気に崖を滑り落ちる。
頭に浮かぶのはあの日のイルの姿。


―――殺させない

殺させない

殺させない



絶対に―――



「カナ、俺の手を離せ」

「ふざけんな!そんな事したら姫さんが悲しむじゃない!!」


咄嗟に崖の岩へと突き刺した槍を握りしめながらカナはハクに叫んだ。


「姫様、泣かせたら許さないから!!」

「!!」


その言葉にハクが目を見開いた時、カナの上に影が出来た。
火の部族の兵たちだ。


「高華国屈指の武人、ソン・ハク将軍と国王専属護衛のカナを討ちとれるなど……なんたる名誉」


その声にハクがカナの上を睨みつけた。
ハクを摑む手に力を込め、カナは槍にぶら下がりながら自身の上に影を落とす兵を睨みつける。

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ムーミン一家 - 暁のヨナ、私も最近ファンになりました!面白いですよね〜ちなみに私はジェハ押しです。これからも頑張って下さい! (2018年7月21日 23時) (レス) id: 8c840e0186 (このIDを非表示/違反報告)
鈴木美妃(プロフ) - ファンになりました。早く続きが読みたいです。これからも更新楽しみにしてます。頑張って下さい。応援します。 (2018年7月7日 19時) (レス) id: 6d5e66c80d (このIDを非表示/違反報告)
ルイナ(プロフ) - 待ってました!更新これからも頑張ってください♪ (2018年7月6日 18時) (レス) id: 29bcf3ece3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さきっち | 作成日時:2018年7月6日 17時

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