63話 『黒刀』 ページ16
キリトside
するとシュンの裾をアスナがちょんちょんと引いた。
アスナ「ねえ、シュン君。キリト君の《二刀流》は解るんだけど……シュン君の《黒刀》は？」
控えめに訊ねるアスナの言葉にクラインたちがまたもや食いついて来た。まあ、確かに俺の《二刀流》は見た目通りで分かるがシュンの《黒刀》は見た目を見ただけじゃ分からないかもしれない。俺もシュンに理由を聞くまでは解らなかった。
シュン「この刀の名前さ。アインクラッドじゃ『刀』なんて珍しいだろ？……でエクストラスキルの名前の理由を探ってたらこの刀の名前にたどり着いた」
クライン「刀の名前？」
シュン「ああ。この刀……《黒刀》って言うらしいぜ」
なるほど……と皆が頷いた。名前の通りシュンの持っている日本刀は刀身が真っ黒だ。わかりやすく言えば俺の持ってる愛剣を刀にした感じ。
クライン「しゅ、出現条件は」
キリト「解ってりゃもう公開してる。な、シュン」
シュン「だな」
首を横に振った俺たちに、カタナ使いも、まぁそうだろなあと唸る。
クライン「ったく、水臭ぇなあお前ら。そんなすげえウラワザ黙ってるなんてよう」
キリト「スキルの出し方が判ってれば隠したりしないさ。でもさっぱり心当たりがないんだ」
アスナ「シュン君は何でランカに隠してたの？」
シュン「いや〜言う機会がなくってさ」
違う。こいつの場合はただ言う機会がなかったじゃなくて言うのを忘れていたのだ。そんなシュンを横目に俺は指先で耳のあたりを掻きながら、ぼそぼそ言葉を続けた。
キリト「……こんなレアスキル持ってるなんて知られたら、しつこく聞かれたり……」
シュン「まあ、いろいろあるだろう、その……」
クラインが深く頷いた。
クライン「ネットゲーマーは嫉妬深いからな。オレは人間ができてるからともかく、妬み嫉みはそりゃああるだろうなあ。それに……」
そこで口をつぐむと、俺にしっかり抱きついたままのランカとシュンの隣にいるアスナを意味ありげに見やり、にやにや笑う。
クライン「……まあ、苦労も修行のうちと思って頑張りたまえ、若者よ」
キリト,シュン「勝手なことを……」
クラインは腰をかがめて俺の肩をポンと叩くと、振り向いて《軍》の生存者たちのほうへと歩いていった。
クライン「お前たち、本部まで戻れるか？」
クラインの言葉に一人が頷く。まだ十代とおぼしき男だ。
クライン「よし。今日あったことを上にしっかり伝えるんだ」
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作者名：さきっち
| 作成日時：2018年3月5日 0時
