*6* ページ26
ーー...パタン。
襖が閉まり、足音が十分に遠ざかったのを確認してから私たちは顔を突き合わせる。
「え、待って待って何でしゃむくん?確認のために聞きますけど私とお見合いしに来たんですか?」
「ぼ、僕お見合いってこと数分前に聞いて...!美味しいご飯食べに連れて来てくれるって言ってたからわくわくして来たのに...!」
慌てるしゃむくんは涙目だ。彼も被害者だった。
私は嘆息して言う。
「あの、万が一にでも私と結婚する気あります?」
「え!?正直あんまり無...あっいや、優ちゃんに魅力がないとかじゃなくて!」
「そんなこと分かってます!問題は、このお見合いをどうやってぶち壊すかでー...」
ーー...スパァン!
「うわあああ!?」
「そうそう、こんな感じでー...って、え?」
つい先刻までのどかな日本庭園が見えていた障子の窓が壊れそうな勢いで開けられる。。
唖然としてそちらを見ると、高そうなスーツに包まれた足がぬっと姿を現した。
その足の、持ち主は。
「ーー...瑠威、兄ちゃん」
「よお、じゃじゃ馬」
性格悪そうな顔に、ガラの悪そうな声、荒っぽい口調。
それとは対照的な、肩に担がれた溢れんばかりの薔薇の花束。
そんな彼が、人を殺しそうな顔でずいと私に迫る。
そして、ぐいっと手を引いた。
「ー...え、」
「お見合いなんかすんなって、言ったろ」
「はぁ...?ちょっ、!」
「御託はいい、このまま攫うぞ。まだ相手来る前なんだろ」
その言葉にハッとさっきまでしゃむくんがいた場所を見たが、そこに彼はいなかった。多分逃げたのだ。くそ。
けれど、そんな冷静なことが考えられるのは頭の数パーセントのみで、あとは瑠威兄ちゃんの言葉に沸騰している。
だって攫うって、もしかしてそれって。
冷静に考える暇を与えんとするが如く、瑠威兄ちゃんから追い討ちが来た。
「お前のことが好きだ。俺と結婚しろ」
ばさっ。
右腕を瑠威兄ちゃんに掴まれたまま座り込んでいる私の目の前に、薔薇の花束が向けられる。
右腕を解くこともできた。顔を逸らして、何言ってんのって誤魔化すことも。
だって、プロポーズですら命令形って。しかも私たち、付き合ってすらいないのに。
ー...でも、私は。
「ー...喜んで。攫ってってよ、どこまででも!」
左手で花束を受け取ると、瑠威兄ちゃんはニッと笑って私を抱き上げた。
廊下から聞こえる慌ただしい足音。
私たちは、顔を見合わせて微笑みあった。
そう、まるで幼いころに戻ったかのように。
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ゆづほたる - 更新ありがとうございます!!一番好きな天月さんの番外…めっちゃ嬉しいです;;さやえんどうさんの書くちょっと腹黒い天月さんが好きです!お相手は夢主ちゃんと全く違うタイプの女の人だけどどうなるんだろう… お忙しいと思いますが、続き楽しみに待ってますね〜! (2018年2月1日 0時) (レス) id: 6489e789b8 (このIDを非表示/違反報告)
まこと - お久しぶりです、更新ありがとうございます!番外編もっとみたいなーとずっと思っていたのであたらしく天月くんのお話が読めて嬉しいです…!他にも書く予定があるようであれば、大人になったみんなが集まって久々に同窓会みたいなのとか見てみたいです…(( (2018年1月28日 1時) (レス) id: 198b5f1113 (このIDを非表示/違反報告)
モノクロメロディ―。(3人目)@ついった(プロフ) - お久しぶりでございます!更新も、主人公が当時推してた天月さんなのも本当にうれしいです。ありがとうございます、若返ります(^-^)月9な天月さん楽しみです~!! (2018年1月21日 16時) (レス) id: f70edfb1d2 (このIDを非表示/違反報告)
ハル@チョコレート食べたい系女子(プロフ) - 更新ありがとうございます! お久し振りの更新、とても嬉しいです! 天月さんの月9のような恋愛、とのことでとても楽しみにしてます! 作者さんのペースでゆっくり頑張ってください! (2018年1月21日 16時) (レス) id: 0930a1d22b (このIDを非表示/違反報告)
夢羽(プロフ) - お久しぶりです!!三年前の当時からずっと読み続けさせていただいてます!!やっときました天月さんにスポットが!!と凄く楽しんで読まさせていただきました!続きが凄く楽しみです!ご無理のない範囲で頑張って下さい!応援してます! (2018年1月20日 23時) (レス) id: 3004edeb5d (このIDを非表示/違反報告)
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