*434*涙が溢れて ページ21
〜しゃむおんside〜
――…昨日の晩からテーブルにあった、冷たくなったハンバーグがメイドによってさげられた。
それと同時に、何故かカーテンが閉められる。
「どうして…」
声をかけるが、メイドはチラリとこちらを見て一礼をしただけ。
窓辺から離れて、出て行ってしまった。
昨日の夕方にこの部屋に入ってから、一度も外に出ていない。
運転していた無口な男の人は、僕をこの部屋に入れて外から鍵をかけてしまった。
荷物は、とか、これでさよならだとしてもせめて挨拶くらい、とか、そんなことを聞く暇さえ与えられなくて。
だだっ広い部屋にぽつんと置かれたベッドに座って呆然としていた。
食欲なんてわかなくて。
当然昨晩は、眠れなかった。
―…時計を見ると、もう夕方の4時。
いつもなら、バイトを終えてAと買い物をしながら帰ったり、大学で天月くんと馬鹿話している時間。
―…今になって、やっと“もう会えないかもしれない”という実感が湧いてきた。
まふくんの悲痛な声がフラッシュバックする。
また彼を泣かせてしまったのだろうか。
出会った頃は泣き虫で、それでいて滅多に笑わない、「悲しい」という感情しかないのではないかと疑うような彼だった。
最近、笑顔が増えてきたばかりだったのに。
96ちゃんや店長は。
自分たちの問題が解決したばかりだったのに。
やっとシェアハウスに戻っていつも通りの日常が送れると思っていたはずなのに。
僕が落ち込んでいる時もひょうきんな態度で励ましてくれる。
その二人は今、いない。
アンさんや灯油さん、天月くんはきっとわかってる。
なんで僕がここに連れてこられたかも、わかっている。
そして、もしかしたらもうこれっきりかもしれないということも。
それでも、いやでも思い出してしまう。
アンさんの悔しそうに歪められた顔。
灯油さんの、感情を押し殺したような瞳。
そして、天月くんの懇願するような表情が。
僕に問い詰めようとするまふくんをおさえながら、「行かないでくれ」と。
そう、誰よりも訴えていたのは天月くんだった。
問い詰めたいのはきっと、天月くんの方だったはずなのに。
―――…そして、Aは。
車に乗る直前に見たAの顔に浮かんでいる感情は、ただ純粋な「疑問」だった。
どうして、何故、と。
それが一番、身を切るように辛かった。
「…ッう、あ…っ」
嗚咽が漏れて、シーツに水滴が落ちる。
泣いているのだと気づいて、目元を拭った。
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水鎖。 - シェアハウスずっと読んでます…!!ストーリーや時間軸がちゃんとしてて読みやすいし、何よりキャラクターの個性がそれぞれ萌えて面白いですっ!!アイコンなんですが、Twitterアイコンに利用させてもらってもよろしいでしょうか…!? (2015年2月1日 22時) (レス) id: 9c55b788b9 (このIDを非表示/違反報告)
BELL - HQの同人誌<黒研>なら4冊持ってます。及川攻めなら2冊出てますよ♪ (2015年1月12日 16時) (レス) id: 70d416ebac (このIDを非表示/違反報告)
青空バード - わー、終わってほしくないです… (2014年12月7日 17時) (レス) id: 37a6055bcc (このIDを非表示/違反報告)
水滴(プロフ) - べっ別にむしろ15までいってほしいとかそんなことめっちゃ思ってるんだからね!() (2014年12月6日 22時) (レス) id: 203b1aa01e (このIDを非表示/違反報告)
白猫ナル@月山(プロフ) - さやえんどうさん» レスありがとうございまーす!数学のテスト死にました!←無理はしてないですよー!明日献上できたら献上しに来ますね!もう少し遅れるかもしれませんが… (2014年12月6日 20時) (レス) id: 4f80e5a98d (このIDを非表示/違反報告)
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