＊４２６＊静かに夜は ページ11
『…あまつき、くん』
「んー？」
再びPCに視線を戻した天月くんに、意を決して口を開く。
嫌だと思われるかもしれないし、差し出がましいかもしれないし、おせっかいなことは重々承知の上だ。
―…でも、天月くんの疲れた笑顔の理由を推測してしまったら、放っておくなんてできない。
『…つらいときは隠さないで、ほしい』
「―…え？」
ゆっくりと、言葉をつむぐ。
届くように。
あなたの心に、届くように。
『つらいときは隠さないでほしいし、無理に笑わないで、ほしい。笑いたくないときは、私達の前でくらい笑わなくていいんだよ、心配なんて、いっぱいかけてよ。
私達一緒に暮らしてるんだからさ。…頼りないかもだけど、支えになりたいって、思っちゃうよ』
「―っ…」
勢いよく手首を引かれた。
咄嗟にテーブルに手をつくが、衝撃を和らげるように腰にまわったのは天月くんの手。
そしてそのまま、唐突に、抱きすくめられた。
息を呑むが、天月くんのすがるような力の込め方と、茶化すような雰囲気がないことに気づいて、声は出さなかった。
声もなく、強く抱きしめられる。
私は、おずおずと両手を天月くんの背中にまわした。
しばらくすると天月くんは、静かに言う。
「…ごめ、ん。変なことしないから、もう少し、このままで」
かすれて消えてしまいそうな、小さな心もとない声。
まるで天月くんのものじゃないみたいな。
私は、小さい子をあやすように、ぽんぽんと背中をさすった。
天月くんは、それに小さく苦笑を漏らす。
「Aには分かっちゃったかぁ。さすがに急すぎて、ちょっと、きつくて。
はは…俺、かっこわるー…」
彼はそう言い、私の肩にさらに顔を埋める。
私は、そんな彼に優しく話しかけた。
『…ううん、かっこ悪くないよ。天月くんはいつだってかっこいいよ。弱ってるとこ見せてくれるなんてレアで、不謹慎だけど私ちょっと嬉しいんだよ？
…だいじょうぶ。きっと、なんとかなる』
天月くんから、嗚咽が漏れた。
肩が、ゆっくりと熱いもので濡れていくのを感じた。
それでも、私は静かに彼の背中をさすっていた。
ダイニングの小さなあかりと、パソコンの微かな光が包む、午前2時。
弱さを見せた彼は、決して声をあげることなく、静かに静かに、泣いていた。
静かに夜は、更けていく。
＊４２７＊そのとき彼らは→←調子に乗りました（色追加しました）
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 358人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
水鎖。 - シェアハウスずっと読んでます…!!ストーリーや時間軸がちゃんとしてて読みやすいし、何よりキャラクターの個性がそれぞれ萌えて面白いですっ!!アイコンなんですが、Twitterアイコンに利用させてもらってもよろしいでしょうか…!? (2015年2月1日 22時) (
レス) id: 9c55b788b9 (このIDを非表示/違反報告)
BELL - HQの同人誌<黒研>なら4冊持ってます。及川攻めなら2冊出てますよ♪ (2015年1月12日 16時) (レス) id: 70d416ebac (このIDを非表示/違反報告)
青空バード - わー、終わってほしくないです… (2014年12月7日 17時) (レス) id: 37a6055bcc (このIDを非表示/違反報告)
水滴(プロフ) - べっ別にむしろ15までいってほしいとかそんなことめっちゃ思ってるんだからね！() (2014年12月6日 22時) (レス) id: 203b1aa01e (このIDを非表示/違反報告)
白猫ナル@月山(プロフ) - さやえんどうさん» レスありがとうございまーす！数学のテスト死にました！←無理はしてないですよー！明日献上できたら献上しに来ますね！もう少し遅れるかもしれませんが… (2014年12月6日 20時) (レス) id: 4f80e5a98d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
