続 》彼女もペットじゃないって知ってます？【夏油傑】[完]

8・期待か、はたまた ページ15

.



ジンジンと熱を持つ耳を押さえ
立ち上がる。



「夏油さんといたら休憩になりませんっ」

『どうして？Aが勝手に気持ちよく「いやーっ」

　それ以上言わないでくださいっ」



とにかく私は続きをしてきます！とその手から逃げるように元いた部屋へと舞い戻った。


ドキンドキンと変な音をたてる心臓が心配になる。
これから私、大丈夫‥なのか？！


雑念を振り払うように一心不乱に片付けたおかげで夕方にはすっかりキレイになった部屋と括られた段ボール達。


それらを玄関先に運んでいるとリビングから顔を出す夏油さん。



『A、買い物に行こうか』




**




ネギを買ってる夏油さんを
今まで想像した事あったかな‥
いや、ないな。


不自然なのにサマになるのは何故だろう。


マンションから歩いて10分ほどのスーパーは夕方とあってそこそこに混んでいる。

そんな中を二人、

当たり前のようにかごをもってくれてぽんぽんと食材を入れていく夏油さんについて歩く。



「自炊ってよくするんですか？」

『恥ずかしながらあまり得意ではないかな』

「夏油さんにも苦手な物あるんですね〜」



私もあまり自信はありませんよ、と笑いながら調味料を選び最後にアイスを買ってレジへ。


お会計をし、一つにまとめた袋を片手に持って
先を歩く夏油さんはゆっくり振り返ると



一歩近づき




私の左手をとった。


(っっ！)


流れるような動作に言葉も出せず
優しく握られる手を遠慮がちに握り返せば



そのまま薄暗くなってきた帰り道を歩き出す。



風が冷たいね、なんて声も上手く聞こえないほど
耳の奥がドクドク鳴ってうるさかった。






***





家に帰り簡単に夕飯を作った。

並んで立つキッチン。
男の人の部屋らしくあまり調理器具もないので
今度の休みに買いに行こうとなった。



食事が終わり、洗い物や後片付けの途中、
ふとしたことで肩が触れ合う。


元々パーソナルスペースが狭い人だけどやっぱり近いなと思いつつ、隣でお皿を拭いている彼を横目で見ながら考えてしまうのはこのあとの事。




お風呂入ったら、

やっぱりそう(・・)なるのかな‥

もしかしてお風呂に入って来たり？！

いやいや流石にそれはないk



『A？』

「はいぃっ、なななんでもないデス」

『後はもうしておくからお風呂入っておいで』





‥‥きたぁ。






.

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す