10日目 ページ10
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__23時、
そこには、いいつけに素直に従うAの姿があった。
『今夜はこれを試してみよう』
「それ、なぁに」
袋からボトルと小さな石を取り出した夏油。
『Aは、芳香浴って知っているかい?』
「ホウコウ、ヨク?」
『アロマって言えばわかるかな』
夏油は拳より一回り程小さな石にアロマオイルを数滴垂らして、ベッドサイドに置いた。
すべすべした石にオイルが染み込み、ほんのりとした香りがあたりを包む。
『アロマって色んな使い方があるんだけど、初めてだから今日は一番優しい使い方をしてみようね』
「うん」
『ボダイジュの香り、…苦手じゃない?』
「初めてだけど、すごく落ち着くいい香りだね」
ん、と頷いた夏油は『A、おいで』と微笑んだ。
あまりの色っぽさにAはゴクリと息を呑む。
「えっ?なッ、な、」
『何してるの、ほら。手出して』
「え、あ、手…」
なんだ、マッサージ、か。
膝が触れ合う寸前の距離まで近づく。
夏油にバレないように、いつもよりしっとりと湿ってしまった手のひらをAはパタパタと扇いで差し出した。
(もう、私ばっかり…)
『いい香りに包まれて心も体もリラックスしてね。きっといい眠りにも繋がると思うよ』
「ん…、ありがと」
きゅ、きゅ、と丁度いい加減でマッサージを施される。
意図的なのか、そうでないのか。耳を澄ませば互いの呼吸音が聞こえそうなほどの静寂。
言葉を発さない夏油をこっそり盗み見ては、Aは色づきそうな感情を必死に頭の隅に追いやる。
(夏油くんは、こんなことで緊張なんてしないか)
嬉しいような、……悲しいような。
そんな時でもAの身体は素直なようで。だんだんと身体が温まると次第に瞼が重くなった。
「__ふぁ……、げと、くん」
『……ん?』
「わたし、……」
『ああ、』
『いい夢をみるんだよ、A』
脳が考えることを放棄する。
とうとう意識が途切れる直前、力を振り絞ってベッドに横たわったAが聞いた夏油の声はやっぱり優しかった。
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すみっことかげ(プロフ) - ココナッツさん» 表情は、意識しすぎるあまり同じ顔になりながら書いていることに最近気づきました。笑 更新を楽しみにしてくれてる人がいることが励みです♡続編も頑張ります〜! (2022年10月19日 19時) (レス) id: 836ec41816 (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - すみっことかげさん» わわわっお返事頂いてるの気付くの遅れてしまったぁぁ…そして続きをありがとうございます!!夏油さんの表情の変化←すみっことかげ様の言葉遣いが上手すぎていつも惹き込まれてます笑 そうしましょう(うん?) (2022年10月19日 17時) (レス) @page49 id: a1f85287cc (このIDを非表示/違反報告)
すみっことかげ(プロフ) - ココナッツさん» 秒レス失礼します!進行形で書いてます。笑 残された夏油くんは今何を思うのか…。わしらモブも木の陰から見守りやしょうぜ(え) (2022年10月18日 12時) (レス) @page48 id: 836ec41816 (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - さ…最終話……??はぅ…寂しい気持ちがありますけど最後まで夏油さんと夢主ちゃんの行く末を見守らせていただきます…!!!(どこから目線…すみません🙇🏻) (2022年10月18日 12時) (レス) @page48 id: 160792ee1b (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - すみっことかげさん» 夢主ちゃんがぎゅっとされてるところを偶然見かけてしまって、見てるのがバレて夏油くんに(この子は私のだよ)って感じで独占欲?剥き出しにされて、ひぇってなるモブになりたいです(え←) (2022年10月11日 9時) (レス) id: 160792ee1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すみっことかげ | 作成日時:2022年7月28日 16時