23時のインターホン [前編]【夏油傑】

５日目 ページ5

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え？指って……





Aは夏油の言っている事がわかるような、わからないような顔で見つめ返す。






『Aと分かれたあと、わたしなりに色々調べてみたんだ。そうしたら冷えは睡眠の大敵だと書かれてあってね』






あぁ、うん、そうなんだ。



全く予想外のことを言われてなんと返せばいいかわからない






『不眠ってね、色々原因があるみたいなんだ。外的な要因もあるし、精神的なものも』

「調べて、くれたの?」

『うん、A辛そうだったし、少しでも力になれればと思ったんだけど。勝手に触れてしまって…驚かせてしまったかい?』

「あっ、ううん、全然っ」

『そう?なら良かった』







確かに急に手を握り込まれて大いに驚いたのは間違いない。



異性の、しかもこんなにゴツゴツした男らしい手に触れられるのは初めての経験だったし、自分以外の息遣いがこんなに近くにいる状況にも慣れてないAはそれだけで頬を染めるくらいには初心だった。





けれどもそんな反応をしているのはAだけで、夏油は本当に心配して彼なりに調べた結果を実践しただけに過ぎなかったのだと理解した。




その証拠に今も夏油はAの手のひらをすりすり撫でたり指先をきゅうっと指圧したり、真剣な顔で試行錯誤を繰り返す。






『どう?すこし温まってきたかな』

「…あ、うん。確かに」

『じゃあこのまま少し続けるね』






膝が触れ合う。数分前までただのクラスメイトだった男の子が私の手に触れている。いや、今もただのクラスメイトなんだけど。




手に触れられているだけではないドキドキが、熱波のように押し寄せる。





夏油に手を取られた時、もしかして彼は自分に特別な想いを抱いているんじゃ、と思ってしまった。





けれども彼の行動には下心どころか善意しかなくて、こんな私の悩みを解決しようと親身に色々調べてくれたのに私ときたら。





(……恥ずかし)






居た堪れないやら、申し訳ないやらで小さく息を吐くAと相反して、涼しい顔をした夏油が微笑んだ。





『リラックスしてね』

「……うん」






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