28日目 ページ28
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Aの呼吸に合わせるようにゆったりと上下する手。
『ねえ、わたしばっかり抱きしめてない?Aからももっとぎゅうってして欲しいな』
「う"ー……、こ、こう?」
『うん、少しは落ち着いてきたかい?』
「……たぶん」
音のない部屋で。
初めよりは落ち着きを取り戻したA。
『心臓がゆったり動いて、体の緊張も解れてきたね。この気持ちいい、って感覚、覚えておこうね』
「気持ち、いい…?」
『そう、気持ちいい』
確かに人の体温は気持ちいい、と夏油の腕に抱かれながらふわつく頭でAは思った。
幼い頃の記憶から止まったまま忘れていただけで、こうしてもらうのが好きだった。
心がぽかぽか温かくて身体の奥から満たされたような。
夏油の香りにはまだどきどきするけれど、それすら心地よく感じるほどAの心は凪いでいた。
この感覚は、そうだ……
夏油が毎夜訪ねてきては、一緒に過ごしていたあの日々にも感じていたものだと、身体が覚えていた。
なんでも抱え込みやすいAの性格を知った夏油は自信をつけさせようとしてくれていたのかもしれない、と
夏油が今までしてくれていた事の核心がわかったような気がした
「夏油くん、ありがとう。前までの感覚、取り戻せたかもしれない。明日から私、一人で『またしよう』」
言い終わらないうちに被せられた言葉に驚く。
「え、でも」
『またいつでもおいで、ね?』
「……夏油くん、忙しくない?」
『きみ以上に大事な予定なんてないよ』
不意に言われた言葉にどきっとする
『そうやってきみはすぐ遠慮しようとするよね。せっかくいい兆しを掴めたんだから忘れないうちに身体に覚えさせなきゃ。それに私も相談を受けた以上、中途半端にはできないよ』
(あ、そういうことね…)
舞い上がりかけた気持ちにそっと蓋をして、なんてことない顔で夏油を見る
「夏油くんが友達でよかった」
『ああ、私もだ』
いつでも頼ってよ、と頭を撫でる手は優しかった。
夏油の部屋から足早に帰ってきて布団にくるまる。
自身を抱きしめながら肺の奥底に残っている彼の香りを思い出すように
Aは深く息を吸って目を閉じた。
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すみっことかげ(プロフ) - ココナッツさん» 表情は、意識しすぎるあまり同じ顔になりながら書いていることに最近気づきました。笑 更新を楽しみにしてくれてる人がいることが励みです♡続編も頑張ります〜! (2022年10月19日 19時) (レス) id: 836ec41816 (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - すみっことかげさん» わわわっお返事頂いてるの気付くの遅れてしまったぁぁ…そして続きをありがとうございます!!夏油さんの表情の変化←すみっことかげ様の言葉遣いが上手すぎていつも惹き込まれてます笑 そうしましょう(うん?) (2022年10月19日 17時) (レス) @page49 id: a1f85287cc (このIDを非表示/違反報告)
すみっことかげ(プロフ) - ココナッツさん» 秒レス失礼します!進行形で書いてます。笑 残された夏油くんは今何を思うのか…。わしらモブも木の陰から見守りやしょうぜ(え) (2022年10月18日 12時) (レス) @page48 id: 836ec41816 (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - さ…最終話……??はぅ…寂しい気持ちがありますけど最後まで夏油さんと夢主ちゃんの行く末を見守らせていただきます…!!!(どこから目線…すみません🙇🏻) (2022年10月18日 12時) (レス) @page48 id: 160792ee1b (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - すみっことかげさん» 夢主ちゃんがぎゅっとされてるところを偶然見かけてしまって、見てるのがバレて夏油くんに(この子は私のだよ)って感じで独占欲?剥き出しにされて、ひぇってなるモブになりたいです(え←) (2022年10月11日 9時) (レス) id: 160792ee1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すみっことかげ | 作成日時:2022年7月28日 16時