21日目 ページ21
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ではまた明日、おやすみ七海ー、
後輩たちの声と共にバタン、と2つ聞こえたのはドアの音。
漸く静かになった廊下にAの口元から手を離した夏油はははっと笑った。
『顔、真っ赤。そんなに苦しかった?』
「…ッ、夏油くんのばか」
ごめん、つい。
頭をぽんと撫でるのはすっかりいつも通りの夏油だ。数時間前、憎悪にも似た感情を顕にする夏油はそこにはいなくて、「よくわからないけどとにかく良かった」と改めて思った。
こっちへおいで、と室内へ案内される。その後ろ姿を見てAの心臓は跳ね上がった。
お風呂上がりなのだろう。肩にかかったタオルの上、普段纏められている髪の毛は全て下ろされていて、雑に乾かされたそこはまだしっとりと湿り気を帯びて見える。
(っ、わあ……)
直視出来ないほどの色気。
決して友達に抱いてはいけない感情。
なにか、いけないものを見てしまった背徳感にAの心臓はどくどくと鼓動を速めた。
『そろそろ来るかなと思って準備しておいたんだ』
ことんと置かれたカップからはいつかの香り。ぼす、とベッドへ座った夏油の足元のラグに腰を下ろしたAはお礼を言ってカップへと口をつけた。
『思ったんだけど、』
僅かな沈黙を破ったのは夏油だった。
『Aが眠れないのって、肉体的な問題よりも今は精神的な事の方が強く関係してるんじゃないかと思うんだ』
「精神的……?」
『そう、一人で色々試したって言ってただろう?していることはわたしが居た時と同じなのに効果が反映されていない』
「……うん、」
『それって心のどこかで不安や迷い、みたいな。目に見えないものでAの内側が一杯なんじゃないのかな』
「…………」
最強と謳われる二人と、類稀な才能を持つ親友。そんな三人と肩を並べるには明らかに劣る自分……
不安や迷い。
そんなもの、上げればきりがない程だ。
いつもどこかで申し訳なく思っていた。
自分なんかが、才能なんてまるでない自分が。
劣等感なんて抱くのが烏滸がましいほどに強くて聡い三人と同じように過ごしていることに。
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すみっことかげ(プロフ) - ココナッツさん» 表情は、意識しすぎるあまり同じ顔になりながら書いていることに最近気づきました。笑 更新を楽しみにしてくれてる人がいることが励みです♡続編も頑張ります〜! (2022年10月19日 19時) (レス) id: 836ec41816 (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - すみっことかげさん» わわわっお返事頂いてるの気付くの遅れてしまったぁぁ…そして続きをありがとうございます!!夏油さんの表情の変化←すみっことかげ様の言葉遣いが上手すぎていつも惹き込まれてます笑 そうしましょう(うん?) (2022年10月19日 17時) (レス) @page49 id: a1f85287cc (このIDを非表示/違反報告)
すみっことかげ(プロフ) - ココナッツさん» 秒レス失礼します!進行形で書いてます。笑 残された夏油くんは今何を思うのか…。わしらモブも木の陰から見守りやしょうぜ(え) (2022年10月18日 12時) (レス) @page48 id: 836ec41816 (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - さ…最終話……??はぅ…寂しい気持ちがありますけど最後まで夏油さんと夢主ちゃんの行く末を見守らせていただきます…!!!(どこから目線…すみません🙇🏻) (2022年10月18日 12時) (レス) @page48 id: 160792ee1b (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - すみっことかげさん» 夢主ちゃんがぎゅっとされてるところを偶然見かけてしまって、見てるのがバレて夏油くんに(この子は私のだよ)って感じで独占欲?剥き出しにされて、ひぇってなるモブになりたいです(え←) (2022年10月11日 9時) (レス) id: 160792ee1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すみっことかげ | 作成日時:2022年7月28日 16時