【イナズマイレブン】紺碧のイノセンス VII (ページ42)

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42話ページ42

「もう乾燥の季節ですもんねー」

『ねー。食器洗いとか大変だ』

「そうなんですー!いつひび割れしてもおかしくないので毎回どきどきですよ!」

デザートライオン戦を明後日に控えた今日。体力作りのための特訓も終え、各々が合宿所内で自由に過ごしていた。

「できました!外れたりしませんか?」

『うん、大丈夫だよ』

水城は絆創膏が貼られた指を何度か曲げ、剥がれないことを確認すると頷く。春奈もそれを見て満足げに笑い、テーブルに置いていた救急箱の蓋を閉めた。

『ありがとう春奈ちゃん』

「いえいえ、これもマネージャーの仕事ですから!お互い乾燥には気を付けましょうね!」

差し出されたドリンクを受け取る白い手。その指先を走る赤い線の存在に気付き尋ねてみると、本人曰く紙でうっかり切ってしまったとのこと。春奈に処置を施してもらった水城は、最後に何故か鋏を借りてから食堂を出ていった。のが、1時間前の話。

『うわあああああっ!?!?!?』

水城の悲鳴が合宿所内に響く。その後に何かが床に落ちたのか鈍い音がし、続いて『いてっ』と小さな声が聞こえた。

「どうした一青!?!?」

『わあキャプテン…』

「どうしたその体勢…」

滅多に大声を出さない水城が叫ぶとは何事だ、と真っ先に部屋に駆け付けた円堂が見たのは、布団を巻き込んでベッドから落ちている水城だった。辛うじて足だけはベッドの縁に掛かっているものの、ひっくり返ったその体勢に後からやって来た風丸が思わず突っ込む。

『ごめん、ちょっとびっくりしただけなんだ』

「びっくりって何に…」

「うわっなんだ!?」

助け起こすために水城に手を差し出していた豪炎寺は、円堂の驚愕の声に反射的に顔を上げた。

合宿所の彼らの部屋にはベッド、机、タンスなどと生活するために必要な家具は一式揃っていた。配置は自由で、物理的にも精神的にも妨げにならなければ持ち込みも基本OKとされている。

水城の部屋は窓と平行になるようにしてベッドが配置されていて、今の豪炎寺の位置からは開いた窓から青い空がよく見える、はずだった。

獲物を確実に捕らえる鋭い爪。

鉤型に曲がったくちばし。

今は閉じられた飛翔力のある大きな翼。

逃さないとでも言うようにこちらを見据える、猛禽類特有の黄金の瞳。

「…は、」

『あ、戻ってきた』

鳥類の頂点捕食者である鷹が、青い空を背景に威風堂々としてそこにいた。