21話 ページ21
「なんかごめんな一青、監督が…」
『大丈夫、気にしてないよ。それに、私はまだ皆と連携の確認もしていないから今回は見て覚えろってことかなーって勝手に思ってる。だから大丈夫だよキャプテン』
「一青が大丈夫ならいいんだけどさ…」
『うん、大丈夫。頑張ろうキャプテン。……あ、木暮君』
春奈と木暮が話している傍ら、ベンチ通告された水城はそれを気にかけた円堂と話していた。あまり詳しくを話さない瞳子だから、水城のそれは完全な憶測なのだが大体合っている。
ならば何故木暮を入れたのかと尋ねられれば、まあ瞳子にも何か考えがあるのだろうと返す他ないが。頑張って、ではなく頑張ろうと言うのが水城らしい。ゴール前へ向かう円堂を見届けてから、フィールドに足を向ける木暮を見て呼び止める。
「なんだよ…。お前も信じてるとか言うのかよ」
『そのことなんだけどね、木暮君の言う信じてるって、信頼?信用?』
「は?どっちも一緒じゃねーの?」
春奈以外には期待されず、不安や不満といった感情ばかりを向けられた木暮はこの短時間でやさぐれた。めちゃくちゃやさぐれた。今回はベンチとはいえ雷門である水城にもぶっきらぼうに返事をする。
『違うよー。時間がないから簡潔に言うけれど、信頼は過去のこと関係なしに期待することで、信用は過去のことを見たうえで信じられるか判断すること』
「ふーん…」
『私はね木暮君、君のこと信用はしてないよ。けど春奈ちゃんがあれだけ君のこと推すんだもん。信頼はしてる』
「…!」
『頑張ろう木暮君』
最後にそう言い、息を呑む木暮の背中を押した。フィールドに足を踏み入れる木暮。探るような目を向ける人もいれば積極的に話しかける人もいて、居心地が悪そうに身じろぎした。
「雷門中…ジェミニストームを打ち破った唯一のサッカーチーム。たったそれだけのことで我らに勝てると思うとは…我らイプシロンの戦士も随分と舐められたものよ」
デザームはフィールド内どころか外まで聞こえる声量でそう言った。
「諸君、キックオフといこうか!聞けい雷門中!破壊されるべきは漫遊寺中にあらず。我らエイリア学園に歯向かい続けるお前たち、雷門イレブンと決まった!漫遊寺中は6分で片付けた。
だが、お前たちはジェミニストームを倒した。その実力を讃え、3分で決着とする。光栄に思うがよい。エイリア学園ファーストランクチームイプシロンの力、思い知るがいい!!」
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作者名：不二市
| 作成日時：2017年9月20日 9時
