【文スト】貴方に出会えて、知ったこと。【宮沢賢治】

伸ばした指を掠めるほどに ページ32

光代side


任務の場所は、私と賢治さんが初めて会った場所の近くだった。



「よりにもよって、此処ですか………」

手を握る力を強めた。

爪が食い込み、血が出てきた。


「…早く終わらせよう。」


バンバンババン

銃声が響く。


私が、賢治さんに助けられたときと、全く同じ音だ。



ああ、夢なら良かったのに。


私が賢治さんと会ったのも。


私が賢治さんと話したのも。


私が賢治さんを好きになったことも。


全部、全部全部。


夢だったら……………良かったのに…………

ああ、ああ。

「もう………疲れた……」

この気持ちを隠すのも。

一人ですべてを抱えるのも。



賢治さんを、好きでいるのも。


……もう、何もかも。


目の前に、敵の刃がせまる。



「此処で死ねたら、どんなに楽だろう。」


敵の刃が、私の体を貫いた。

何度も、何度も。


痛い。



苦しい。



熱い。


助けなんていらない。



だって、ようやく私は…………



「楽に……………なれる…………」



血が抜ける感覚と、一瞬の浮遊感。



そこで私の意識は途切れた。

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