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ふたりでひとつ。
＿＿ふたりで、ひとつ？
ひとつ。
ひとつ。
「っ〜〜っ！」
そういうこと？
ふたりでひとつって、そういうことなの？
気持ち悪い。
体の内部が暴れる感覚がする。
つまり、私のこの炎熱の"個性"は、兄から譲渡されたもので。
元々、焦凍にぃは氷結と炎熱の"個性"を持っていたわけで。
『俺たちは、ふたりでひとつ、だな』
あれはあの時私が感じていたような意味じゃなくて。
私と焦凍にぃは、ふたりでひとつの"個性"を持っている……
「か、あっ……あ、う"ぉえ、う"ぁ"……」
濁点付きの汚い声と共に、嫌に酸味のある液体と固形物が混ざったものが口から流れ出た。
吐いた、と認識するのは早かった。
あれ、今日の夕ご飯何だったっけ……マグロの竜田揚げだ。
美味しかったなぁ。
ごめんなさい、冬美ねぇ。
冬美ねぇの美味しご飯、もどしちゃった。
ごめんなさい、お布団汚しちゃった。
「っ、は、はぁ、はぁ、っ、おぇっ」
まだ嘔吐くのは止まらない。
でも胃の中身は一瞬で空っぽになってしまったようで、顎までギトギトに汚れたあとは吐かなかった。
＿＿お布団、洗わなきゃ。
立ち上がろうと布団に手をつけると、ぐちゃっと嫌な感触がする。
その感触の正体に、私は思わずうえ、と声を漏らしてしまった。
声を漏らした口内も、どろどろのぐちゃぐちゃで気持ち悪い。
やけに粘り気が強くなった唾液は、酸味を増している。
早くうがいをしたい。
汚れた布団のシーツを持って部屋を静かに出る。
「……A？」
「っ、！」
暗闇の中から、焦凍にぃの声が聞こえた。
びっくりして、思わずトタタ、と足音がたってしまった。
「隣から具合悪そうな声が聞こえたが……大丈夫か？」
心配するような声音。
暗闇の中でも、私の顔を覗き込んでくる視線は痛いほどにわかる。
今、一番に聞きたくない声。
「な、なんでもないからっ」
「っおい！」
汚れた口元を多いながら、駆け足で洗面所に向かう。
この後、焦凍にぃが私を追いかけてくることはなかった。
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作者名：emiria | 作成日時：2021年6月12日 17時
