私の心は燃えている #7 ページ21
「それでは、失礼致します」
そう伝えられマッサージが始まる。
うつ伏せに寝転ぶと、背中には女性の温かくて柔らかい手の指圧がかかる。なんとも言えない心地良さを与えてくれる。
「力加減は如何でございましょう？」
「問題ないです。ありがとうこざいます」
そう伝え目を瞑ると女性はぽつりぽつりと私に話しかけてくれる。
「全身凝ってらっしゃいますね」
「お食事はいかがでしたか？」
「飲酒はなされましたか？」
といった他愛のない世間話をいくつか終えると、女性の声色が少し変わり「素敵な恋人さんでいらっしゃいますね」と声を掛けられる。
その瞬間、一気に身体が熱くなる。
「ち、違います！ そんなんじゃ……っ」
咄嗟に振り返ると、女性は少し驚いた顔を見せすぐに申し訳なさそうな顔に変わった。
「そうでしたか、失礼致しました。お客様があまりにも幸せそうな笑顔でお話なさっていたのでつい……」
慌てて謝る彼女に、逆に私が申し訳なくなる。
私の心がもっと強ければきっと胸を張って恋人だと言えるのに。
「恋人、じゃないけど……私の、大切な人です。世界で一番愛しい人、ですかね」
そう伝えると女性は優しい笑顔を見せてくれた。
二時間程かけて身体を解してもらい、寝たきりでぼろぼろになっていた身体は随分と楽になった。
「ありがとうございました」
女性へそう伝え、シャルへ連絡すると数分で部屋へ戻ってきた。
「あれ？ シャルなんか、ご機嫌だね」
「そう？」
「何か良いことあったの？」
「どうだろ。それよりAはどうだった？ 気持ち良かった？」
「うん！ 大満足！ シャル、ありがとう」
「なら良かった。俺もお風呂入ってくるし、先に寝るなら寝てていいよ」
そう言うと、シャルは脱衣所へと消えていった。
鼻歌を歌いながら歩くシャル。ラウンジで何か良いことがあったんだろう。気になるけど……それを聞くときっと『なんで気になるの？ 俺のことが好きだから？』なんてからかわれるのが想像でき、ぐっと堪えベッドへと潜り込んだ。
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作者名：咲月 | 作成日時：2020年1月8日 0時
