万葉の親友 ページ16
※捏造のみ
触れた手が温かい、刀を握っていることが多いから手の平には肉刺があるけどそれすら愛おしい。
「あんたの手、大分小さいな……壊しちまわないか心配になる」
昔はお前とか言われたり散々ぶっきらぼうな扱いをされたりしたけど、今となってはそれが嘘みたいに接される。
気付くと擦り寄って来てべたべたしている。流石に人前ではしないけど、自身の親友の万葉の前はする。1人と言えども人目があるから恥ずかしいけど、彼は意に介した様子を見せずに万葉と話したり剣技を磨く以外はすぐ傍でじっとしてる。
「あんたと表立って歩けないのが悔しい……何だよ、お偉いさんは利の為なら何でもして良いのかよ」
指の隙間に、自身の指を絡ませるように仕込んでくる。ちょっとくすぐったいけど、彼が甘えている証拠なのは明白なので溢れる熱情を押さえ込むのに必死になる。2人きりと言えども、今は昼間故に。
しかし、彼の言う言葉の真意はわたしたちの行動に制限がかかっているのは事実だ。将軍様が目狩り令なるものを発令してからは、神の目を持つ者たちは肩身が狭い思いで生活を強いられている。それは彼もその親友も同じ状況だ。
「俺はな、あんたと城下町を歩いたり買い物に付き合ったり祭に参加したりしたいんだ。万葉とよくつるんでた頃は一切思わなかったのになあ、不思議だ」
確かに彼がお祭りではしゃぐ性格でもないし、初対面の人に積極的に交流をかける程に社交性もない。そう考えると、何故万葉と彼が親友同士になれたのが不思議だ。男同士の友情が発動しているのか、それとも2人ともがすごい剣術の使い手でもあるからか。
そんなことをぽやぽや考えていると、若干眉をひそめて瞳をより鋭くさせる彼と目が合った。
「おい、誰を考えてんだ。万葉じゃないよな？……悪かったな、アイツみたいに愛想が無くてな……」
言い終わる前に、わたしの肩に顔を埋めて小さな声を漏らす。自身を卑屈に思っている言葉で、否定するように空いている片手で彼の背中を撫でる。
わたしだって、彼と日常的にすることを平然と堂々としたい。買い物だって娯楽だって、日中でも夜中でも共にしていたい。その言葉を伝えると、少し顔を上げて近寄せる。
「……その言葉、夢、俺も同感だ。いつか、共に……Aといつでも歩める土地にしたい」
耳元に囁かれる夢は、儚くも強く心に深く刺さる。わたしもだと言いながら、繋いだままの手を軽く払って両手で大好きな人の頭を抱き締めた。
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