アルハイゼン ページ1
カーヴェ先輩のいるらしいお茶会に、アルハイゼンさんから誘われた。どんなお話をしようかなと考えながら訪れると、アルハイゼンさんだけしかいなかった。しかも場所が彼の家と、ちょっと気まずい。
「不服か」
そんなことはない、ちょっと驚いただけ。それを柔らかく伝え、彼が差し出したお茶を飲む。それはピーチティーで、彼がこのような甘い物を飲むのかとちょっと意外な一面が見れた気がする。
「Aの好みを選出した、それは好みか?」
甘い紅茶は嫌いじゃないので、素直に頷いた。すると彼は口元を僅かに緩ませて「それなら良い」と言った。
その後、わたしの仕事である雇い主の赴くがままの建築デザインや彼の方の話も聞けた。ちょっとだけカーヴェ先輩の話が聞けたから、ここでも収穫ものだ。
「話は変わるが、カーヴェに好意を寄せている様子だが合っているか」
突然の話の転換に、思わず食べかけの茶菓子が変な所に行きそうになって咽せる。突如近くに寄って来て、背中を撫でたりお茶を差し出したりしたアルハイゼンさんによって落ち着いた。
「図星か、確かにその傾向が見られる。今日は23回彼に目線を寄越し、5回会話をしていた。更に話している時は顔が明るく目が輝いているように見えた。これは業務外のことだ、そのような気が無いとなかなかできるようなものではない」
自分でも知らない自分のデータを出されると、怖いどころの騒ぎじゃない。
それより、ちょっと待って。何でいちいち数えているの、どういうこと。恐ろしくなって、おそるおそるアルハイゼンさんに目線を向ける。彼の鋭い眼差しが射抜いてくる。それが恐ろしくて、無意識に身震いする。
「俺はAが好きだ。カーヴェから聞いていたが、実際に逢って知れば知る程に益々知りたい欲に駆られた。現に今もそうだ、隅々まで知りたい。無知な所が一切無い程に、全て知り尽くして愛したい」
急に顔に手を伸ばし、自分の頬に彼の大きな手が触れる。片手剣を扱っているだけあって、ややごつごつした手だ。でも、わたしは彼じゃなくてカーヴェ先輩に触って欲しかった。でも、アルハイゼンさんを傷付けて良いのだろうか。
「葛藤している顔だ、その思いは命取りになるぞ」
急にふらりと体が揺れる。彼に抱き止められたけど、段々眠くなってきた。
「時間稼ぎはできたな、効いて良かった」
薄くぼやけていく視界の中で、恍惚そうな表情でわたしを見下ろしていた。
「これから彼の分までたくさん愛そう」
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