皆を平等に愛した ページ9
「げっ、きみってそんな癖が強い武器持ってるの？ぼくも握らされたけど、すぐに重くなって雷が降り注いでからはもう二度と持ちたくない代物だよ……」
もう地獄にいる気分じゃなかったから、こっそり天国に帰って来た。たまたま同じ訓練場所に来た上級天使に、持っている武器にそんな感想をもらってしまった。上級天使だから、一回触ったことがあったらしいし。
「きみと同名の女性の天使が持っていた武器だよ、その武器を持っていると本当にA様にそっくり」
わたしは下級天使なのに、過去にいた上級天使の彼女とよく間違われる。
実際にたくさんの天使に囲まれているそのマスクが取れていた彼女の写真を見たけど、本当に自分にそっくりでびっくりした。でも、彼女の目がすごく輝いていたし、わたしより羽が綺麗だった。目の中にハートのような光が灯っているみたいな、儚く尊い輝きだった。
「彼女はすごかった、女神アフロディーテまではいかないが慈愛に満ちて天使も悪魔も皆を平等に愛した大天使様だった。聞いた感じだと、原始の天使の1人だったし」
すごい天使にそっくり、結構良いことかな。目の前にいる上司は、懐かしむように大事な思い出を語るような口調で言った。
「よおし、特訓だ。まずはこの的を壊す勢いで突くんだ！」
重い槍を持ち直し、何とか走る。アラスターは言った、力を一転集中させることに特化しろと。
的に突撃するように走るが、しかし何故か的から外れて壁に槍の先がぶつかった。同時に、壁にひびが入っていく。一気に崩落していく様は、スローモーションに見えた。そして、青ざめる。
「何をしている！訓練場の壁の破壊許可はしていないッ！！」
「！！申し訳ありませんっ！！ほら、きみも！」
後ろから怒号が飛んで、槍を持ってそっちへ駆け寄る。火事場の馬鹿力という単語が浮かんだけど、とにかくアダム様に謝り倒した。そもそもアダム様が何でここにいるの、そんな疑問しかない。
「お前たちに処罰を下す！！今すぐ来い！！」
そんなこんなで、その場にいた上級天使の上司と一緒にある部屋で反省文を書いていた。上司は10枚、わたしは100枚。おかしい配分、でもわたしだけが本当に悪い。
「大丈夫かい？ぼくは全然気にしていないし、監督不行き届きのこっちが悪いのは明白だし……」
もう上司は全部書いてた。わたしはまだ3枚しか書けてないけど、何とかすると上司を見送った。
でもどうしよう……まあ、何とかなるかな……日はまたぐ前提だけど。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 153人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
