焼きが回った ページ7
何とかバレずに帰って来て、他の天使たちに紛れて仕事をした。代表として報告書に色々書きこんで提出するだけかと思ったけど、何で今日に限ってアダム様に報告しなきゃいけないのか。
側近の天使にすごい睨まれて、怖くて顔を若干反らす。何とか顔を元の位置に戻して、報告書に目を通しながら言う。わたしいなくてもいけるよね。でもどうしてこうしているんだろうか、暇なのかな。一切口に出さず、心でずっと自問している。
「すまないが席を外してくれないか、下級天使のAが話し難そうだ」
側近の黒い天使は、そっと下がって部屋から出て行く。それにしても、何でわたしを呼ぶ度に下級天使って言うんだろうか。区分付けしなくても良いでしょ、わたしと同じ名前の天使は今のところいないと思いたい。
また2人きりで、頭がおかしくなる。どうしてこんな場を設けるのかイマイチ分からないけど、そっと報告書を差し出して詳細をご覧くださいと言う。
「……覚えているのか」
急に意味の分からないことを言われ、何に対してかを聞いた。しかし、腕を組んでわたしをじいっと見るだけ。マスク越しでも感情は分かり易いけど、今まででも全部良くない。
実際に呆れと諦めに近いような気がする。
「……一体何を訊いているのか、自分でも焼きが回ったとしか思えん……訊く相手が下級天使であれば、そうか」
乗るイスをくるりと動かして、背もたれを見せた。さっきから彼の言動が意味が分からない。何をしたいのか。わたしをサンドバッグにしたいだけなら、ちょっと悲しい。用事が無いのなら帰りたい、そう伝えてから出ようと扉に音を立てないようにそそくさ近寄った。
「まだ帰って良いとは言ってない！勝手な行動は慎め！」
気付くと、わたしの近くで扉の前に陣取っていた。瞬きした瞬間に近いレベルで、不自然じゃない程度にいる。びっくりした、体が硬直してる。それでも近寄るから、とんでもなく威圧感がすごい。
「お前はそうだ、やめろと言ってもやめない―――昔から何も変わっていない！」
生前か。でもそこまで引っ張り出さなくても良いと思う。それでも口を開けれない程に、強い緊張感が纏わりついている。
「命令だ、これ以上は身勝手を働くな！反故にするなら、懲罰を受けてもらうぞ！」
地獄に行っちゃったけど、バレなきゃ良いよね、うん。そう思いながら、了承の言葉を吐いて退出許可を得たので飛び出した。安堵しながら、帰路を進んだ。
「同じ轍を踏ませるものか……」
気にかける必要性が見当たらない→←また逢えなくなるのは寂しい
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