奇天烈な天使の運命 ページ36
※『偽らなくなった天使』のif
天使の輪は頭の上から消えて、頭の等間隔に黒い羽が生えてきた。そして、わたしの羽が灰色になって、真っ赤な更生施設のホテルで寝泊まりすることになっていた。
「にしても、思い切ったな」
真っ赤な衣装に包まれたわたしを見ながら、ハスクに話しかけられた内容にはにかむ。
だって、高位な天使になっても意味が無いと知ったから。だったら、アラスターと共に在り続けたいと思ったら眷属になることになった。所謂堕天使で、地獄に居座ることに決めた。
「すごいな、奇天烈な天使の運命を見ている気分だぜ」
元はわたしは天使だけど、こんなに赤色が似合うなんてちょっと嬉しい。そう思いながら、隠していた槍を取り出して磨いていた。このコもわたしと共に堕天を選んでくれたから、相当な覚悟が武器の中であったのかなと思う。
「食べて食べて！」
ニフティの作ったお菓子を食べる。とても美味しい、すごいな。わたしなんか全然追い付けないな。
そう言えば、彼女はにこりと笑った。
「後輩のAには教えてあげなくちゃいけないことがいっぱい！！うふふ！！たくさん食べてね！！」
これは良い先輩を持った、嬉しいじゃないか。そんなこんなで、お菓子をアラスターに届けて欲しいと言われたので持っていくことにした。お菓子の載ったお皿を手にして、多分いるであろう部屋に向かう。
「おや、貴女でしたか。それはニフティが作った物でしょうか、頂きましょう」
丁度ラジオ放送を終えたようで。良かったと思いながら、彼女の用意した物を差し出す。
彼も口に運んで、お上品に咀嚼してその後に口を開けた。
「これは貴女に差し出す前提で全て作ったようですね。彼女も貴女がとても気に入っているようで」
後輩補正かなと思いつつ、空のお皿を手にしたまま答えてみる。
アラスターに引き寄せられて、膝の上に座っていたことに後々気付く。次第に恥ずかしいけど、嬉しいのもあった。
「放送後で少し息抜きしたいので、Aで癒されたいです」
後ろから柔らかく抱き締められて応える為に、手の中にあったお皿をそっと置いて後ろにある頭が見えるように手を伸ばした。赤い髪を撫でて、鹿っぽい耳も撫でる。
「ふふふ、撫でるのが随分とお上手になってきましたね。ええ、もっとしてください」
こうしているだけでも、とても満たされた気持ちになれる。だから、ずっとこうしていたい。ぐるりと体の向きを変えて、向かい合うように抱き締め返した。
終わり
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