頭も弱くとも賢い選択は出来るだろう ページ32
「馬鹿者ッ！！」
起きた瞬間に、脳が大きく揺れる程に大きな声に怒鳴られた。耳も頭も痛い、またベッドに倒れ込む。
「あの場の悪魔が死滅したとは言え、ガス欠みたいにぶっ倒れる天使がどこにいる！！馬鹿だろ！！」
今度はほっぺたをつねられる、痛い。何で痛いことばかりするの。辛い、何でアダム様がまたいるの。ここどこだ。
「お前という部下がいるだろ、それを面倒だが面倒見なきゃいけないんのだぞ。後はここは俺の仮眠室だ、医務室は溢れかえってしまった。異論は認めんぞ」
苛立った様子で言っていたけど、皆は大丈夫なのかな。それが気になる。すると、今度は頭を軽く小突かれた。
「奴らも俺の部下だ、柔かったら困るだろ」
彼の部下は大きく分けると、エクソシストと普通の一般的な天使。わたしはその中間的な位置にいる。どっちも、タフじゃないとやっていけない仕事が目立つ。
「舐めるな、お前が弱いだけだ」
それは認めるけど、毎度毎度言わないで欲しい。少し辛いけど、わたしも権力を持つ天使になって地獄のこともしっかり見るんだ。だから、へこたれられない。
「そこまでする必要は無い筈だ、一端の天使だ。人間から天使になっただけだ。よって権力を持つ必要は無い！俺だけが持っていれば良い！！」
急に権力の話を振って来るけど、初っ端からへし折って来るのは嫌いだ。わたしを散々もの扱いしてきたくせに、どんな口で言ってくるんだ。ここまでしっかり言えないけど、彼を何とも言えない目で見るだけしか出来なかった。
「そんな目しか出来ないお前だが、もう何も考えなくても良いのだぞ？俺の言葉全てに頷いてくれるのであれば、安定した事柄を保障しよう」
急に手を差し出して、じっとマスク越しでも強い眼差しがある目で見られる。
「―――俺の女になれ、いくら頭も弱くとも賢い選択は出来るだろう！」
言われたことに意味が分からずに、見詰め返した。
「光栄だろ！元を辿れば、俺は人類の祖先だ！その大祖先様とより親密になれるのだぞ？何故頷かない！！お前が権力を得る可能性もあるのだぞ！？」
どうしてもできなかった、わたしが全く好きじゃないのにだ。何より、彼の前妻たちに見た目も中身も劣るからむり。それらを丁寧に伝えて、気持ちだけ嬉しいと言いながら、断っていた。丁度、彼が何かを言いたげになったと同時にノック音が聞こえてきた。
「……リュートか、入れ」
もうわたしから目線を反らして、これ以上は目が合うことはなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 153人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
