友を思い遣るのは至極当然 ページ4
マスクを外して槍を持って天界を歩くが、思った以上に重い。手に馴染まない以前に、さっきより重くなってる気がする。いや、徐々に現在進行形だ。天国に来てからファンタジーとか何でもありを感じたけど、まさかこの武器もファンタジー要素か。
でも、あの悪魔さんに会いたい。確か、アラスターだって。それで天国まで連れて来てくれて、そのお礼をまた言いたい。何度でも言いたいし、会いたい。でもどうやって地獄に行こう、門番さんは今度こそ通してくれるか、この武器は使いこなせるか。色々な懸念点がある。
考えても始まらないので、こそこそ近寄る。たまたま見た先で、門番さんが休憩時間か何かで少し姿が見えなかったので素早く通過する。
「重そうな槍を持ってるが、悪魔を殺しに来たのかい？ああ、違うって分かりますよ。冗談です」
すぐ会えてびっくりする、しかもお目当てさん。
重い槍で迷子でもあってふらふら地獄を歩いていたが、唐突な行き当たりばったりでも会えた。でも強大な悪魔だから、案外簡単かもしれない。
「まさか君から逢いに来るとは、感慨深いですね」
前はありがとう。天国への門の道が分からなくて、ふらふら歩いていたから。
結局アダム様に怒られて、この重い槍を罰みたいに渡された。さっきからずんずんと重くなってるけど、ほんとに何なの。
「特殊な槍じゃないかい？持ち主を認めない限りは、色々妨害するみたいです。主人と認められてないから、さっきから槍を落としそうになっているんだろう」
何で知ってるの、ふらふらの体でも覚える疑問。どうしたら良いの、そう苦し紛れに聞く。
「過去の天使の友人が、似たような武器を持っていたらしくてね。認められるまで、振り回されっぱなしだったって苦笑で言ってました」
その天使さんと絶交したのかな、過去って言ってるから。
「彼女は死んだ、皮肉にもその癖が強い武器を持って行ってなかったからです」
だから、「防犯意識があるのは良いことだ、でも今はワタシがいるから気にしなくても良いさ」と言ったんだ。悪魔だけど、そう言ってもらえるのはとても頼もしいし嬉しい。わたしも何かできたら、出来る範囲でするから。
「友を思い遣るのは至極当然さ。しかしそこまで言うとは……魅力的だが、後回しで良いかい？それまで、今のAと逢瀬を楽しんでいたいのです」
逢瀬という言葉に気になったが、まるでわたしがメタモルフォーゼするみたいだ。問い詰めても、上品にくすくす笑うだけだった。
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