最期までぶれずに美しかった ページ27
「俺も断片的にしか知らないが、天界から情報が漏れ出る程にすごい天使だったらしいぜ。何せ、すごい働き者で誰かの為ならずーっと動き回ってるってレベルだったらしいしなあ。寒気がするぜ」
そう言いながら、安酒をあおる。ビンから口を離して、そしてつまらなそうにまた言葉を繋げる。
「その天使が地獄にやって来た。分厚い衣装やマスクをしても、溢れ出る神々しさは眩かったぜ。大きな羽も立ち振る舞いも、何もかも目を奪うモンだった」
「武器を持ってなかったから、すごいバカだった」と続ける。そう言えば、アラスターもそんなこと言ってったっけ。彼女も武器を持っていれば、長生きできたかもしれないのに。
「ま、そん中であの悪趣味を塗り重ねたような赤い悪魔に遭ったんだよ……俺も一回だけ会ったが、マスク外してたからびっくりしたな。嬢ちゃんにそっくりだが、若干大人びいて目の輝きがとんでもなかった。比喩だ比喩、実際に目からビームが出てたわけじゃないぞ」
目からビームを出す天使って何だろう、それはそれで希少価値みたいなものがあると思う。そう思いながら、彼の話を聞く。
「最初は呆れてたアイツも、何回か会う内に軟化してってな。アレは見てて面白かったぜ」
くつくつ笑い、また安酒をあおる。その天使はアラスターと仲が良かったみたいで、少し胸が痛くなる。気にしないようにしながら、天使のことを聞く。
悪魔たちに分け隔てなく優しく接していて、演説していたとのこと。
「"悪魔でも心を入れ替えたら天使になれる可能性があります、頑張りましょう"ってな。茶化した反応の悪魔が多かった、誰かから挟んで聞いた俺でもそう思った」
今のチャーリーみたいなこと言ってる、その天使。パンセクシャルっぽいって言ってたけど、どういうことかな。
「あー……そうだな、誰にも厚意や好意に読み取れる言葉を吐いてたんだよ。穏やかで顔立ちは整っている女に言われたら、誰も靡いちまうだろ？そんな感じだ」
「それもあって、アイツは死んだ」と続ける。痴情のもつれかな、そんな感じがする。
「一方的だ、一方的。あの天使に好意を抱いていた悪魔が、自分以外の誰かに会いに行くのが気に食わなくて殺したっぽいんだ」
「最期まで、全悪魔や天使を想って永い眠りに入った。彼女は最期までぶれずに美しかった」
急にアラスターが話に入った。言葉はいつも通りに聞こえた裏腹に、若干の悲しさが浮かんでいたように感じた。
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