知らなくて良いこともある ページ26
「そう言えば、Aって皆に対して無節操に愛情を振る舞っていることはないですよね」
「その見た目の天使なら、誰も彼もにも好き好き言ってただろ」
「そういう君もパンセクシャルじゃないですか」
「うるせーよ、俺はあの天使とは全く違うっての」
またハズビン・ホテルにお邪魔になっていたけど、そこで住んでいたりスタッフとして働いていたりする彼らに会った。今日はエンジェルはいないし、チャーリーやヴァギーもいない。常識的な人たちがいないけど、大丈夫かな。まあ大丈夫だよね。
「アラスター！なんだ、その天使をまた連れて来たのか！もうその面は見たいと言ってないぞ！むーっ！」
「ワタシの友達です、お互いに仲良くなれるはずです」
「むーっ！その面を見せろ！」
ヘビの悪魔さんがアラスターからわたしに目線を移していた。真っ赤な目にぎろりと睨まれる。この人、なんて名前だっけ。忘れちゃった。
「なぁぜぇっ！！何度も！この偉大なる！悪魔の名を！忘れるのだぁっ！！」
「ふふふふ、結構仲が良いじゃないですか」
「違ーうっ！！断じて違ーうッ！！」
このヘビさん、面白い。反応が良いから、皆にいじられそうだなと何となく思っていた。
「ふん。この偉大なる科学者のサー・ペンシャスの名を忘れるなぞ、とんでもなくめでたい天使じゃないかっ！」
「じゃあ、そのめでたい天使をそわそわしながら待ち続けていた君はどうなのかい？」
「だ、黙れ黙れっ！！」
急に目を見開いて、アラスターの言葉に勢いで否定する。次第に怒りの矛先が、わたしからラジオデーモンに向かう。何だか楽しい人たちだと見ると、たまたま近くにいたハスクに声をかけられた。
「天使の嬢ちゃん、もしかしてあの原始の天使の生まれ変わりか？」
分からない。でもそれくらいにそっくりって言われる。じゃあ、その天使の話を聞かせてよ。
「構わねえけど、つまらない話だぜ」
構わないよ、知ることって良いじゃん。そう答えると、彼は大きく溜め息を吐きながら口を開けた。
「知らなくて良いこともある、嬢ちゃんの場合はそれかもしれないってこった」
良いよ、アダム様がムダに関わって来る理由もちょっと知りたいし。そう思いながら頷くと、彼はまた溜め息を吐いた。
「分かった、俺の知る範囲だからそこまでだ。一番知ってるのは、あの悪趣味に悪趣味を重ねたような男だぜ」
そっか、後でもっと詳しく聞くつもりだよ。今は、その天使が死んだ理由を大ざっぱでも知りたいから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 153人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
