比較すら烏滸がましい ページ24
しばらくわたしから離れなくて大変で、泣いてるみたいな雰囲気があったけど顔が見えなくて分からなかった。でも、体は震えていて声も同様だった。
わたしって、アダム様にこんなことをさせる程に、色々できていないのだけど。どうしてだろう、まさかわたしをそっくりな原始の天使様と勘違いしているのかな。それはやめて欲しいな、彼女はすごいけどわたしはへぼへぼだから。
「全く以って、その原始の天使とは違う……！雲泥の差だ、比較するな……！！」
でも何でわたしがその天使様と重ねるように言うの、わたしは違うよ。
「知っている、大馬鹿な原始の天使はもういない……！どこにもいない、こと、くらい……！！」
着ているローブを握って、顔を見せないまま言葉を吐露していた。でも、やっぱり威勢が無い。いつもわたしにガミガミ言ってた大天使様がどこに行ったのだろうか。
「A……もう、どこにも行かないでくれ……俺を何度も跳ねのけないでくれ……」
一体どっちを見ているのか、ちょっと悲しい。アダム様は、彼女が大好きだったのかな。だから、子どもみたいに縋りついて来るのかな。
わたしじゃないって分かるのは、目を合わせたら分かるよね。だって、天使さんたちにも彼女を知る悪魔にも目が輝いていないって言われたから。それ以外はそっくりだって。目線を合わせて欲しいと言って、早く目を醒ましてもらうんだ。
「……A、A……？帰って来たのか……？」
顔をようやく合わせてくれたけど、疲れ切った表情でわたしを見ていた。しかし、少しずつ嬉しそうになってきて、その度に無意味に身震いを起こす。何かイヤなことが起きそうで。
「もう悪い結果を招かない為には、と何度も途方もないくらいに考えた。仕事中でも会議中でも食事中でも、Aが死んでからずっとだ」
急にずしんとのしかかってくる言葉たち。纏わりついて離れない、逃がしてくれない。何とか腕を外に一本逃がしたら、そこに急に槍が飛び込んで来た。
そうだ、これで何とかなるかも。限界なりでも振りかぶって、その槍先じゃない方を彼に叩きつけた。
「―――ッぃ！？」
腕が緩んだ瞬間を見計らって、固く結ばれっぱなしだった腕から脱出する。そして、無我夢中で部屋から飛び出してもなお走った。何も周りが見えないけど、どうでも良かった。
今は、何でも良いからさっきの光景を忘れたい。ただただその気持ちだけだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 153人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
