ふざけたことを抜かす ページ23
目を開けると、知らない天井が見えた。何だろう、分からない。疑問ばかりで分からないでいると、自分の傍でじいっと見下ろす存在が見えた。彼はイスに座っていて、わたしをじっと見ていた。
顔は知らない人だけど、雰囲気はよくわたしに文句を言う人と瓜二つ。
「起きたのなら言え！」
はい。そう言いながら上半身を起こすと、頭を軽く叩かれた。痛い。でも、この人は初めて会った気がしない。茶髪の金色の眼を持つ天使の男性を見ていた。よく見たら、アダム様の衣装と瓜二つでもある。うっそっだあ。
「アダムだ！お前の上司の更なる上司の、天使の最高位を確立している大天使のアダムだ！」
また怒られた。びっくりした。でも、何でここにいるんだろう。お互いに何故こうなっているのか分からないってことじゃない、と思う。
「魔力の放出のし過ぎで倒れた！この馬鹿者！」
また怒られた。何回怒られるんだろう。それにしても、ここはどこだろう。
「俺だけの仮眠室だ」
なるほど、アダム様はわたしを診てくれていたのか。良かった良かった―――いや、全然良くない。わたしを辱めようとした男だ、あんまり長居はできない。もう帰ろうと、挨拶とお礼を程々にベッドから出る。
「待て」
その言葉でベッドから出たばかりだと言うのに足をまた止めてしまった。わたしの真横で天使の男は話し始める。
「A、何故天使だけを見ない」
悪魔も悪く無いと思う、だから仲良くしたい。そう言いながら、体の位置を整える。さっきまでベッドの中のわたしを見ていたせいか、それで目が合わなかった。しかしゆっくり目を合わせてきた。
「悪魔など、下種で救いようの無い存在共だ！肩入れするなど、ふざけたことを抜かす必要はあるのか！？」
誰だって救われたいし、地獄の王女様の活動は悪くないのだ。その中にいるヘビの悪魔さんは、ちょっと荒っぽい言動が目立つけど改心してくれていると思うから。だから、何事も突っぱねるのは良くないと思う。後はもっともっと仲良くしたい人がいるから。
「何故言う、何故断る……何故繰り返す……俺が嫌いなのか」
腕を掴まれて引き摺り込まれる。気が付くと、彼の腕の中にいた。そして痛く強く抱き締められる。
「またAを失くせと言うのか？何か言ってみろ！なあ！なあ！なあっ！？」
顔は見えないけど、声は錯乱して震えているものだった。震える体の背中に、自分の腕を回すことはできなかった。
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