敵とする相手として ページ22
先輩は優しいから、上層部に伝える伝言係に言うことはしなかった。仕事の後は、槍を扱う為に頑張る為に訓練場に行ってみたら壁が元に戻っていた。すごい、早い。
「お前のせいで、無駄に額が追加された！上に怒られたではないか！！」
しばらく訓練場で重いままの槍をずんずんと突くようなポーズをする。振りかぶったり、壁にある的の真ん中に当てたり。最近は命中率も断然に上がってきているけど、まだ重いまま。認められていないってよく分かる。
ようやく休憩に入ったのが、周りに人が全然いなくなってからだった。他にもちらほら訓練していたけど、わたしだけになっていた。そして気付くとアダム様がいた。彼はむっとした表情のまま、手にしている消費額の紙を見せつけて来る。その一番下に壁の修理費用とか、後は窓の修繕費もあった。前者はわたしのせいなのは間違いないので、気まずい中でもまた謝った。
「槍をロクに扱えないクセして、地獄の仕事に就くなぞ死に急いでいるのか」
そういう訳じゃない。わたしの小さなそれでもって大きすぎる野望を抱いて、常に頑張って足掻いているのだ。まあ、それはアダム様に口が裂けても言えないけど。
「私を敵とする相手として見ろ、決して悪魔と重ねてくれるなよ！？」
ムリ、怖い、アダム様を傷付けたくない。思わずその言葉が口走って、彼から逃げる。しかし、前に降り立って訓練場から出る扉の近くまで行かせないと分かる。
「私に一撃を加えたり、今身に纏っている物に傷をつけたりでも良い。下級天使の攻撃で死ぬなぞ、ある訳無かろう？」
やるしかないと槍を持ち直す。武器を持っていない丸腰な相手に引けてしまうけど力を込めて走り込む。やはりひらりと身を躱される。
しばらくそんなことを繰り返していて、体力と腕の限界を覚えていた。
「その攻撃だと、運動にもならんぞ！へなちょこめ！」
イヤな声と顔で言う。それは分かってるよ、今のわたしは身の丈に合ってないって。だけどさ、端から全部否定するのはおかしいと思うよ。そう思いながら、槍を持ち直して息も絶え絶えながらも走って力をこめて向かう。
「！？」
急に槍が軽くなって、先から稲妻が走った。びりびり大きな音を立て、アダム様に向かった。彼は咄嗟に躱したが、直撃した壁は無惨に穴が開いて瓦礫が舞っていた。
「……今回は私の負けだ」
真っ白なローブの下方が一部焼け落ちていた。それは先程の物だと分かって、少し嬉しくなったけど急にぷっつり意識が―――
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