手に余らせる方が良いだろう ページ3
ひっそり訪れて門番の天使さんにお品物を渡して、アダム様に会ったら誤魔化して欲しいと頼み込んだ。笑顔でにっこり了承してくれた上に、品物を優しく返された。帰り道はその品物を食べながら歩いていた。
「今までお掃除ありがとう、すごく助かったよ」
今日で掃除当番は終わり、担当天使さんにお礼を言う。するとむこうは笑顔で聞いて頷いてくれて、またお礼を言われた。なので、こっちもお礼返しをする。
「……何をしてるんだ」
気付くと、アダム様に声をかけられていた。お礼合戦を繰り広げるわたしたちを見るのが、呆れた眼の2人。それは、アダム様とその側近。
自分の横にいる天使が彼に挨拶を始めたので、自分も続けて挨拶をする。
「これはアダム様、お帰りなさいませ。挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません」
「下級天使のAと何をしていたのだ」
「本日で彼女がここの業務から離れるとお伺いしたので、お礼を言っておりました。今日までの働きぶりは評価せざるを得ないものでした故に」
少し照れたけど、アダム様が下がれと命じたのでその天使は去った。その場に残るのは、アダム様とその側近、そしてわたし。アダム様に連れられ、また部屋で2人きりになる。今度は何を言われるんだと、びくびくしてしまう。
「本日をもって、ここの業務に外れることは承知だろう。再び、天界の見回りに命じる。しかし、支給した武器を破壊した為に、万が一の時に対処できなくしてしまっただろう？お前のような破天荒天使はもう会いたくなかったがな！」
ぎろりと感じるマスク越しの目線。乾いた声でしか返事ができない。
妙な雰囲気になりつつも、急に手を中途半端に掲げた。すると、その手の中に煌びやかな雰囲気の槍が握られた。唐突に現れたが、あたかも自然なようにわたしに押し付けた。何とか手にしたけど、手に馴染まない。しかし、初めて見るのに懐かしい気持ちが膨れる。
「強度が尋常じゃない為に壊せないと思うが、壊すんじゃないぞ。ある天使が持っていた武器だが、死んだ故に昨今まで誰も手にしていなかった」
そうなのか、でも何でわたしにと言う疑問があった。
「他の上級天使共に持たせたが、誰も扱えなかった。しかし、下級天使のAの手に余らせる方が良いだろうな」
在庫処分という言葉が頭を過ぎったが、それでも良かった。久し振りに運命の片割れと逢ったような感覚がしたから、巡り会わせに感謝しなければいけない。手にしている槍を、しっかり持ち直した。
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