全くもって見向きしない ページ20
アラスターとホテルに行くと、バーで不貞腐れたような表情でビンを抱えながら眠っているハスクをちょっと眺めてからそこを去る。
チャーリーやヴァギーに出くわす前に厨房に着いていた。そこでニフティがせこせこ料理を作っていた。彼女の手さばきを眺めていると、良い感じのトルティーヤみたいな物を作っていた。
「これが、あのコが作った料理なの！け？けさ、でぃー？まあ、何でも良いから食べて！」
急に差し出された料理を口に運ぶ。優しくてそんでもって、あんまり過激じゃない味。寧ろ優し過ぎてびっくりするくらい。地獄の料理ってこんなものなのかな。疑問に思いながら食べている、いややっぱしちょっと舌にひりつく味がある。なめてかかったらいけない。
「実はね、Aって名前のへなちょこ悪魔が作った料理なの！メニューからなくしちゃったらかわいそーだから、作ってるの。悪いコだけど、最近ぜんぜん会えないからうれしくないの……」
少しめそめそするニフティに対して、屈んで大丈夫かと声をかける。わたわたしていたけど、ニフティはにこっと笑っていた。さっきのは嘘かな。
「いいの、あのコは悪いコだからずっと好きよ！Aは良いコすぎるから、イヤ、だけど……でも、トクベツよ？」
わたしのほおをぺちぺちと軽くたたく少女、しかし穏やかそうで良かった。そうだ、チップでも。ローブの裏側にあったポケットにあったコインケースからコインを取り出して彼女に手渡す。すると嬉しそうにぴょんぴょんしながら、去って行った。
「子ども心を把握しているみたいですね」
そんなことない、あんまり使う機会が無い。それなら使ってもらった方が良い。そう言いながら、その一室から共に出る。
「そうだ、ワタシの眷属にならないかい？ニフティやハスクはワタシの眷属のようなものだ、彼らと一緒にもなれます」
初めて会った時に言われた言葉。またあの時と同じ声、顔で言った。
ううん、天使だから。頑張りたいし、認めてもらえるかもしれない。でも、あなたと一緒にいるのは毎日楽しそうだね。
というより天使に持ちかけるなんておかしな話だとも思うけど。
「興味無かったら、全くもって見向きしないですから。それにしても、初めて逢った頃からずーっと魂が純白過ぎてまともに触れられないなんて悲しいじゃないか」
その割には悲しそうな顔をしていない。どっちなんだ。
「ここまでガードが固いと付け入る隙がないですね」
そこまでガードは固くないと思うけど。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 153人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
