最大限の温情 ページ18
「ほら、喋れ！」
何でこうなっているんだろうか。羽にまでドギツイアクセサリーが纏われて重いし、露出の激しい悪魔的衣装に困惑が隠し切れない。メイクもまさにそれ。どう見ても、天使が悪魔のカッコウを最大限に真似ているみたいで、恥ずかしくて目線が下向きになっていく。
「全土放送じゃない分、最大限の温情だと思え！！」
でも、録画で見せびらかすって相当悪趣味じゃん。そう思いながら、槍を持ち直す。
「ほら、何か言え！！」
「A。ほら、笑顔作りなよー？」
「ぎこちない不細工な笑みじゃない！欲しいのは過激でスキャンダラスな言葉だ！！」
「横の薄い頭がヒスってるから、まずはあいさつしてみなよ」
おはようございますこんにちはこんばんは、そう言った。
「……ゲスト出演の才能すらないだろ」
「放送していないってことは、大天使が怖いって所みたいだしねえ。悪魔ヘイト強いみたいだし」
「あのラジオデーモンすら、積極的に戦いたい雰囲気とは思えないが……」
アダム様ってそんなに強いの、知らなかった。そう思いながら、何を言おうか悩んだ。そしてふと思いついた言葉。それを言う為に口を開けて、喉から声を通す。
「……自己紹介をするんじゃない、見るに堪えないぞ」
「逆に吹っ切れてて面白いじゃないかっ、ふふふっ、あはははっ！」
むこうやここでの夢を語る、悪魔と天使が仲良くなりますようにって。わたし自身、そうでありたい人がいるから。ヴォックスは呆れて、彼が急に隣に立った。そして、カメラ目線のままだけどどこかにこやかに言う。わたしの肩を抱いて、引き寄せる。
「マヌケな下級天使をとっ捕まえた！これから、尊厳を傷つける行為をする！」
そう言いながら、わたしの心臓辺りに手をかざしてそこから何かがずんと引っ張られる感覚がした。心臓から零れる淡い光の線が見えて、困惑する。しかし、すぐにばちっと静電気の発生音より大きな音が響いた。耳が痛くて、思わず塞いだ。それはヴォックスにも甚大な被害があったようで、淡い光の線から手を離してそれが帰って来た。
「死んでも尚、なんて魂の強さなんだ！！この天使！！」
「あ、魂ってこんなに抵抗力あるんだ？見た目によらなさすぎるんじゃない？それにしても痛そうでさ」
「アラスターが眷属していないのは、こういう理由か……痛いな」
急に録画停止と言い出して、このカッコウのわたしが流出しないことに安堵を覚えた。だって、すごく恥ずかしいから。
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