似合わない辛気臭さ ページ16
越えたその日からは、アダム様にまだ呼ばれては色々言われる。責務とか自分の頼りなさとか、色々言われるのみ。淡々とそれに答えるしか方法がない。
「地獄の役職になりたいと言ったな？」
ふとその言葉が聞こえた。顔を少し上げると、側近と大天使の顔が無表情に近い顔でいた。そして、その言葉に思わず何度も頷いていた。皆にすぐ会える、そうして目が輝いていたと思う。
「お前が願うことが、非常に愚かだと思い知ると良い。勝手にしろ、喘ぎ苦しめッ！！」
結構なことを言われている。しかも、いつもより口調がキツイ。いつもそうだけど、それに拍車がかかってる感じがする。そして、とっとと出て行けと言われたので出て行った。扉の外にいた天使と共に、地獄を取り締まる役所に向かう。天国と地獄の間みたいな場所にある、小さなそれでも普通に過ごせそうな建物だ。
今日からではないけど、一日目として数えると言われた。
「ここで準備をする。交代もあるし地獄の悪魔たちがしでかしたら、容赦なく捕らえるなり殺すなりするんだ」
殺すのはできるだけ避けたいし、その必要は無いと思う。でも、その天使は苦笑を浮かべながら「リーダーアダム様は、年に一回は悪魔の大量殺戮を命じているでしょ？だから、気にしていたらキリないんだ」と言った。アダム様は悪魔の数を減らす為だと上にも言っていると、周りの天使たちに告げる。何だか、悪魔に対してとても嫌悪を覚えているみたいだ。
「ここに来れるようになったら言うよ、書類とか移籍とか色々しなきゃいけないから」
このまま地獄に行っても良いかと訊ねる。すると、こっそり了承した。
1人でこっそり向かうと、途端にお人形さんみたいに綺麗な衣装を身に纏った悪魔が立っていた。
「……ん？アンタ、もしかして最近地獄をうろちょろしている羽と槍がゴツイ天使だろ？ああ、そうだね！ほら、マスク取ってみなよ！」
何だか変な女性悪魔に捕まったと思っていると、そのまま勝手にマスクを取られた。驚いて変な声を上げて、マスクを返してもらおうと必死になっていた。でも、上へ上へとするから全然取れない。
「羽あるんでしょ、飛べないのかい？」
そう言わないで。わたしだって好きで飛んでない訳じゃない、怖いから。落ちちゃったらイヤだから。
「可愛い顔してんのに、似合わない辛気臭さ持ってんじゃん。ま、そんな服より良い物を見せてやるわ！」
急に腕をがっと掴まれて、ずるずると引き摺られた。一体どこに行くんだ！？
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