今も昔も全て何もかも ページ15
マスク越しでも悍ましい雰囲気を漂わせたまま、そしてわたしの手首をがっつりと掴んできて全然放せない。何でと困惑していたけど、覆い被さる存在はとても怒っていてここまで怒らせることをしたのかなと怖くて堪らない。
「何故、そのように言う！その思考を抱く！自身を客観視できているか！？地獄に行こうとする！生き急ごうとする！自身を殺すようなことをする！その愚鈍で愚図な天使を知って何になる！今自身の目の前にいる大天使を納得させるように全て答えろ、ほら！？なあ！？」
徐々に迫力を増し、更に詰め寄る。何も答えられない、緊迫感で喉を締め付けられているように口からは言葉が出ない。全部答えられない、何一つ答えられない。体が変な悪寒を覚える。手首を押さえ込む指は、布越しでもすごく痛く感じてしまう。
「見たことか！まともに答えられない上に、此方をそのような目で見るか！非礼な行為ばかりだ！品性皆無だ！！」
分かってる。だったら言わないで欲しい、そんなわたしでも変わりたいって思ってるんだ。端からへし折るようなことを言わないで、少しでも天使でも悪魔でも役立てるような天使になりたいだけ。
それらの言葉たちを何とか開けた口で繋げて、ひっくるめて言う。すると、ぎりぎりと歯を食いしばるような音がマスク越しから聞こえる。
「それは口答え、か―――このまま辱めたら、大人しくなるか？」
そう言いながら、手首から手を離してわたしのローブを乱暴な手で脱がそうとしてくる。下には支給された簡素な物しか身に纏っておらず、下着とか羽があっても着やすいタイプの薄い布地の洋服たちがすぐに見えてしまう。実際になりそうで、必死にその迫りくる手を押さえこんでいた。
「なあ、なあっ！？何故拒むッ！？今も昔も全て何もかも！！なあ、答えろ、なあッ！！」
いつもの威厳は崩れ、必死に言っている様子だ。怖くて怯んで、自身の体が布越しでも手が触れている。怖くて、何も言えなくて今度は体が硬直する。
「―――……チッ、もう良い」
急に手を離し、わたしから離れた。そして、扉を開けてそこから出て行った。自分は1人だけで、ぱたんと扉の閉まる音が聞こえた瞬間に天使としての洋服を整える。遠くで誰かの話声が聞こえて、さっきやめた理由が分かった。
でも、さっき言われたことは全て事実。悲しくなって胸を締め付けられたと同時に、頬を雫がたくさん濡らしていく。手の平や手の甲で、その雫たちを必死に拭った。
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