他人の決定権はその他人だけしかない ページ13
ホテルであり更生施設なハズビン・ホテルに着くと、チャーリーが出迎えてくれた。そして、彼女と話しているとヴァギーがわたしの顔をまじまじと眺めていた。
「……目がそんなに輝いてないね」
「ヴァギーったら失礼よ、でも急にどうしたの？」
「昔に一回だけ、このコにそっくりな天使に会ったけど……ずーっと笑顔で、マスク越しでもそうじゃなくてもすごく輝いている雰囲気があった。見ていると、とても落ち着いてすごい天使だった」
へえ、ヴァギーってすごい。
わたしはその天使に一度も会ってないから、羨ましいな。もう死んでいるみたいだから、その前に会ってみたかった。
「彼女は約100年前に悪魔に襲撃され殺された、因みにその悪魔も同時期に死んでる」
笑顔で答えるアラスター。そっか、なら遅かれ早かれ死んでも無意味なんだ。仕方が無いか、わたしがあれこれして会える方じゃないし。
「鏡合わせになったら、疑似的に会えるじゃないですか」
「顔はそっくりだけどさあ―――アンタって、やけにその天使に詳しいじゃないか」
「まあまあ睨まないでくれ、彼女とは友人だったっだですよ」
「へえ―――えっ！？初耳なのだけど！？」
「聞かれませんでしたから」
チャーリーとヴァギーに色々聞かれるアラスター、話題についていけない自分は彼らの近くでお茶を飲む。
そんな天使と友達だったんだ。確かに天使とは友達だったって言ってたけど、まさかその天使だったとは。これでも、驚きと平静が均衡してせめぎ合っている。
「だから彼女に近寄った、と？どんだけ執念深いんだ？」
「ワタシが好きなように過ごしているだけです。Aもワタシと共に過ごすことを許容している、君たちの言う悪いことは一切していない」
そうだねと頷くと、ヴァギーは呆れた様子になってわたしとアラスターから離れてチャーリーの隣に戻った。すごく心配されてるって分かる。
「悪く捉え過ぎだと思うわ。他人の決定権はその他人だけしかないから、私たちができるのはアドバイスだけよ？貴女も分かってるんじゃない？」
「アンタのお気楽なとこがすごく良いけど……Aが良いなら、何も言えないけど……」
溜め息を吐きながら、わたしを見る。でも、そういう所はお友達としてすごく好きだな。空になったカップを近くに置いて、彼女たちに近寄る。そして、また遊びに来ても良いと訊ねる。
すると彼女たちは大きく頷いてくれた。良いお友達がここにもいるなんて、とても良いことだなと改めて思った。
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