そっちの方が良いじゃないか ページ12
「君たち2人でいる所は珍しいね、どうしたんだい」
横で猥談を続けるエンジェルと歩いていると、気が付くとアラスターがわたしの隣で歩いていた。唐突で意味が分からなさ過ぎて、頭が追い付かない。
エンジェルの腕を肘でつんつんする。言うなって言う意味だけど、むこうはべらべら喋り続けている。
「色々話してたんだ、結構面白いよ？例えば、天使ちゃんって―――」
もういい加減にして欲しいと、切に願う。しかし、止まらないので槍から手を離して彼の真ん前に立って口を両手で塞ぐ。これ以上はやめて欲しいという意思表示だけど、彼はにやにやした目でわたしを見る。
「ん、ん、んんん？んーんっ」
「おや、どうしたのだい」
「ん、ん―――っぷは、っ！もう、急に何するのさ？まあ良いけど」
生娘扱いでも良いけど、堂々と他者に公言するのはやめてよ。恥ずかしいの、察してよ。
苦言を呈すると、げらげら笑うエンジェル。そして、複数ある手の内の一つがわたしの背中を羽をかいぐくってバンバン叩く。
「A、中身がなんであれワタシは何でも受け入れますよ」
「良かったじゃん、アイツがオーケーって言ってるじゃん」
「そっちの方が良いじゃないか、とても良い」
そうなの、それより意図が見えない。疑問符が頭を埋め尽くしながらも、あのホテルに一緒に行く。別に外でも良いと思ったんだけど、さっきのエンジェルの言葉に何とも言えない気持ちなのと、ホテルの支配人の彼女だけでなく他の悪魔たちに会いたいのもあった。
「あ、そういや俺、この後はステキなおじさまと会う予定だったー！天使ちゃんに会うと、色々忘れちゃうなあ」
「男性の予定がいっぱいなのが、珍しいこともあるのですね」
「まあ、楽しいコだし？天使ちゃん、また話聞かせてねー」
二つの手がわたしの顔に触れて、頬をもにもにと動かすように撫でていた。ちょっとくすぐったいけど、彼なりのスキンシップだと思う。性的な目で見られていないから、普通に安心できる。同時に頭もたっぷり撫でられ、くすぐったいのがとても多い。なんか、指先の遣い方が微妙にそう感じる。気のせいだと良いんだけど。その後はすぐに手を全部放して、そっと離れて行った。
「地獄に君臨する天使と、誰にも思わせない。絶対に、だ」
力強く言われたその言葉、そして優しく肩を掴まれて覗き込まれる吸い込まれるような赤くも暗くも感じる眼。見れば見る程に吸い込まれそうで、ずっと見ていたいって心の奥で願ってしまった。
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