分かる人には分かる ページ11
昨日は色んなことがありすぎて、頭がパンクしそうになった。もう、何なの。
そうもやつく気持ちを押さえながら、今日も訓練場へと足を運ぶ。
「100枚書き終えた？」
上司の天使がいた。許してもらって20枚にまけてもらったと言ったら、驚いていた。
「え、アダム様が？言っちゃなんだけど、部下に対してはとても横暴だよ？それなのに許してもらえたの？う、うむむむ……」
急に深く悩みだした、そこまですごいことをしてもらったのか。いや、100枚の反省文は結構な量だった。少し腑に落ちてなさそうな上司に、武器の扱い方をレクチャーする。未だに重くて手に馴染まない槍だけど、最近はこれで筋トレしているとポジティブに考えよう。
「重そうで、持ち主も相手にも殺傷能力が高い槍を使えているようになるとはね……認めてもらえている証拠じゃないかな」
そうだと嬉しいな、早くこれで地獄に行っても怒られないようになるのが夢だから。地獄の見回りの天使になって、気軽に友達に会えるようになりたい。
「え、地獄の役職に就きたいの！？なんとまあマニアック……あ、ああ……そう、分かった。役職を取り締まっている天使に、そのことは話しておくけど」
良かった、そう思いながら槍をまた持ち直す。やっぱりすごくすごく重い、何だろうまだ認めてもらってないのかな。まあ、元の相方がすごい天使なら仕方が無いか。
その上司の天使と片づけをしてから、一緒に出る。そして、今日も地獄に行こうと門まで歩んでこそこそと向かう。マスクはしているけど、ピンク色の悪魔はわたしに難なく近付いた。
「あ、メイド……じゃなくて、天使ちゃん。奇遇じゃん、なにしてんの？」
エンジェルに会った、天国からさぼって抜け出したと言ってからそっちこそ何をしているのかと訊ねた。
「俺はナニしてたけど？」
片手の指で輪っかを作って、そこに人差し指を通過させたり出したりを繰り返した。それは営みの暗示だよね。
彼は同性愛者だけど、人それぞれの恋愛状態をあれこれ言う立場にいないのでこれ以上は言うのは野暮かなと思った。
「もーそーゆー所も良いと思うよ。まんまメイドちゃんなんだよねえ、ってことは処女？」
唐突なセリフに、何とも言えない気持ちになる。ちょっと恥ずかしいので、羽で全身を隠す。くすくす笑ってる彼がちょっと憎い。
「ホントに一瞬で、分かる人には分かるくらいに綺麗な羽と物騒な槍を持ってるね。それで判断したし」
うん？それってまずいよね……？
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