第三話。 ページ5
「ふーん。ジブン、田舎から来たんか。」
きゅうりの糠漬けをポリポリと齧りながら、彼は私の話を聞いていた。
ちなみに、此処は居酒屋である。もちろんお酒は飲んでいない、まだ昼間だし。
「はい。・・田舎、と言っても田んぼに囲まれているような田舎ではないんですけどね。」
「はぁ？じゃあどこの田舎やねん。田舎と言ったらそのイメージしかないやろ。」
「その、島です。・・小さな島で生まれ育ちました。」
「・・・ほ〜、島かいな。」
「お待たせ致しました、唐揚げです。」
珍しいのぉ、と言いながら、彼は運ばれてきた唐揚げに手を伸ばす。
あ、レモンかけてええ？と聞いてきたので、どうぞ。と答えた。
「島言うたら、やっぱ沖縄とか南の方にあるんか？」
「・・あ、はい。そんなところですね。」
本当は違うのだが。
バレても面倒なので、適当な嘘をついておいた。
「・・所で、あなたの名前は・・・。」
「・・お！そやった、忘れとったわ！
わしは真島吾郎っちゅうモンや。ま、よろしく頼むで〜」
ヒヒッと笑いながら手をひらひらと振る。面白い人だ。真島さん・・覚えておこう。
「私は潮江Aって言います、宜しくお願いします。」
「Aちゃんやな！よし、覚えたで〜！！」
よろしゅうな、と頭をわしゃわしゃと撫でられる。
はじめは少し怖かったけれど、今となってはとても良い人だ。
Aは、そっと頬を緩めた。
「・・・・・あ」
「？どうかしたんか？」
そのまんま本名名乗っちゃったよ・・・。
・・ま、まぁ、何とかなるかな。
「いえ、なんでもないです」
「そか。・・まっ!まだ時間はあることやし、もっとお話しようや〜！！！！」
「そうですね。」
(続く)
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作者名：顕微鏡 | 作成日時：2016年9月13日 23時
