君と僕と僕らと (ページ10)

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炬燵で編集作業をしていると玄関から物音がして弾かれるように顔を上げた。リビングに顔を出したのはこの部屋の同居人ではなく上の階に住むそいつ。先に店を出たはずの彼女は戻った自宅には居らず、マサイの家に帰ったのだと悟った。あぁこれは説教を食らうなど独りごちて、そいつの言葉を待つ。

「お前はどうしたいんだよ」
「あ？」

入り出しが想像していたものとは違ったが、聞かれた意味がわからず中途半端な返答をする。どうしたいって、何がだ。まず彼女の名前が出てくるもんじゃないだろうか。マサイの表情から意図は読めず、次の言葉を待つ。

「惚れてるなら惚れてるで、やり方があるだろ。大事にしてやれよ。仲間だろ」
「待て待て…惚れてるって？誰が、誰に？」

そんなの、Aに決まってるだろ。さも当たり前のようにそう返すマサイに、俺は疑問符が浮かぶ。惚れてるって？俺が、Aに？いつ？そんなわけがないだろう、彼女は昔から俺たちの仲間でそんな風に意識したことはない。頭が否定するが先程の俺の行動はどうだ。感情任せに彼女の唇に噛みつき、あまつさえ床に押し倒そうとした。そこまで考えて、マサイの言うことに一理あるが、しかしそれでもと頭は否定を要求する。

「お前…無自覚でそんなことやったのかよ」
「や、だってあいつ他の男にえらい無防備で、なんかむかっとして…それでキス…」
「キスぅ？！てめぇ手ェ出してんのか！」

片眉吊り上げて奇声を発したマサイに、そこまで聞かされてなかったことに彼女の優しさが垣間見えたが、しかし今自分で暴露してしまったことに後悔の念しかない。俺は何をやっているんだ。

「なんか歯止めが効かなかったんだよ…俺、あいつのこと仲間としか思ってなかったはずなんだよ…」
「相当重症らしいな…とりあえず、暫くあいつはこっちで預かるぞ。お前頭冷やして考えろ。それでから、あいつに謝りに行け」

そうしてマサイは自宅へと帰っていった。俺は誰もいない彼女の部屋に視線を送り、再度自分のしでかした過ちを悔やんだ。