君と僕と僕らと (ページ34)

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『あの…シルク、違うの』

至極申し訳なさそうにそう言う彼女の表情は、先程までの悲しみはなくどちらかといえば驚きの方が強そうに見える。何が違うと言うのか、彼女の告げたそれは明らかに未来への不安だ。

『我慢、してるわけじゃないけど…そうやって溜め込むのは私の悪い癖。でもそれじゃ上手くやっていけないのは目に見えてる。だから、ちゃんとシルクに思いを伝えなきゃいけないなって』
「伝える？」
『思ってること、ちゃんと。許されるなら、これからもずっと一緒に居たいから』

家で小言を言いだしたのは、彼女なりの努力だったのだと気付かされる。それも、これから俺と一緒にいる上で彼女なりに変わろうとしてることだったと。それなのに、俺は何て返しただろうか。何て扱いをしてしまっただろうか。自分への腹ただしさで殴りたい衝動にすら駆られるが、悔いたところで過去が変えられるわけじゃない。

『きゃっ…』
「…ごめん、ホント俺…お前のこと何も考えてやれなくて、あんな酷いこと言った」
『や、私も何の前触れもなかったというか』
「お前が気遣ってくれてることも全部分かってるつもりなのに…お前の優しさに甘えてばっかりだよ。でも無理に全部言うことねぇ」
『え？』
「小出しにはして欲しいけど、まぁ偶に爆発したっていいよ。受け止められるくらい器のでかい男になるよ、俺が。だから、これからも一緒にいて、A」

愛しさ、申し訳なさ、幸福、罪悪感。色んな気持ちが入り混じり隣に居た彼女を抱きしめた。こうした些細なすれ違いはこれからもきっとあるだろう。その度にこの夜を思い出せばいい。隣を歩くのは彼女しか居ないということを。