もう、知らない。【Satoshi】 (ページ39)

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38 智side ページ39

俺はニノからAのことを聞いてたから少しはこいつのこと知ってる。

それでもなぜか俺は、俺がこいつのことをもっと知りたいって思った。

ニノよりもたくさん。

だからあえて聞いてみた。

Aが陸上を始めた理由を。

智｢じゃあAが陸上やり始めた理由は？｣

そう聞くと、Aの笑顔が苦しげになって俯いてしまった。

智(…聞いちゃまずい理由あったかな。)

俺は聞いた罪悪感に駆られた。

悪いことしちゃったかなって不安になってる自分がいるのが分かっていた。

智(もしかして、俺と同じような経験してた？)

そう考えた時、Aは遠慮がちに言った。

A｢んー。ちょっと話長くなるんだけど…｣

Aの話を聞いていて、とても自分と似てるところがあり過ぎる気がした。

A｢私が陸上やり始めたきっかけは、元々足が速い方だったからっていうのとハードルやってみたいなって思ってたからなんだよね。｣

Aはそのまま続けた。

A｢私陸上始めたの中1の12月でね。元々ソフトテニス部だったの。
そのテニス部ってのは私の代から作られた部活でね。
その作られた理由が、私の友達2人の強いペアがいたんだけどその2人をリーダーにして学校の名前を有名にしようとしたからで。
今はそのおかげでかなり強い学校のひとつとして強化指定されてるんだけど。
だから私みたいな初心者はチームから省かれて人間関係がグチャグチャだった。
それに耐えられなくて、この陸上部に入ったの。｣

智｢…。｣

ほら、やっぱり俺と同じじゃん。

A｢陸上部に入った頃は先輩たちも優しくて陸上も楽しいし、素直にすごくやりがいを感じてたのね。
でも今は…｣

そこで不意にAの言葉が詰まった。

智｢…今は？｣

A｢ふっ、本当バカなんだよね、私。
だってさ、中学生のころあんなに楽しかったのに今は全然部活は楽しいと思わないんだもん。
ていうか、そうさせたのは自分のせいなのにさ。
あーあ、本当なにやってるんだろ私。
もっと早く自分が悪いって気付いてたらこんなことにはならなかったはずなのに。
本当バカ。自分に呆れて笑っちゃうわ。｣

俺は気づいてた。

こいつが無理に笑ってること。

そして、泣くのを我慢してることを。