人をコロしてシねよとて 代役・かすみ ページ24
かすみちゃんが頑張って喋ります。
「にしてもかすみ、あんたヒョロっとしてるねぇ。これじゃあ男に見られないのも当たり前だよ」
「でも…僕は本当に男で…」
「それは判ってるよ。でもこんななりじゃ荷物持ちさせたら折れちまいそうで心配だねぇ」
与謝野は顎に手を当てて考えだす。
「そうだ、乱歩さんには悪いけど…二人で何か美味しいものでも食べに行こうかね」
「美味しいもの、ですか…？」
「まずは体を丈夫にしないと何も始まらないだろう？」
「そう、ですね？」
「じゃあ荷物持ちは今日良いから行くよ！」
「ぁ、はぃ」
そこから二人は喫茶店巡りと少量の買い物をした。
与謝野が色んな店のショーウィンドウを見ている時、かすみはちょっとだけ楽しそうに微笑んでいた。
「なんだいニヤニヤして。言いたいことがあるなら言いな」
「ぁ、その…僕にお姉ちゃんがいたらこんな感じなのかなって…ぁ、気に触ったならごめんなさぃ…」
「なんだそんなことかい…ちょっと嬉しいねぇ。あたしにも弟がいたらこんな感じじゃないかと思ってたところなんだ」
「そう、でしたか…」
「そんなにおどおどするんじゃないよ。あんたは綺麗なんだから自信持ちな」
与謝野がかすみの頭を撫でると、かすみは嬉しくて微笑んだ。
やっぱりそれは誰でも虜にするような美しい笑みだった。
与謝野は少しだけ頬を朱に染めた。
かすみは少量の買い物袋を与謝野から自分の手に移し替えた。
少量の買い物をしたとはいえ数はそれなりにある。
「僕も、男…ですから」
かすみが男らしいところを見せようと頑張っている姿を見て、また与謝野は微笑ましく思ってかすみの頭を撫でた。
そうして二人で街を歩いているとある一人の少女とすれ違った。
かすみが振り向くと彼女も振り向いた。しかしすぐに前を向いてしまった。
「……？」
そしてかすみは台本通りにはいかず、持ち前の瞬発力でぶつかる相手を避けてしまった。
「ぁ、ごめんなさぃ…今、ぶつかるシーンでしたね」
「そんなこと気にするんじゃないよかすみ、これであたしも汚いオッサンの相手をしないで済む」
若干酷いことを言われてオッサンはしょげてセットからいなくなったが、撮影は続行された。
続く。
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作者名：三日月 | 作成日時：2019年4月27日 20時
