検索窓
今日:13 hit、昨日:59 hit、合計:76,753 hit

ヒーロー【ジョナサン・ジョースター】 リクエスト・?さん ページ33

「返して!!」


 放り投げられた本を取り返そうと手を伸ばす私に、彼らは笑い声を上げた。

「そんなんじゃ取り返せないぞ!」

 私より背の高い奴が私の本を掴んで背伸びする。高いところに伸ばされた手にはジャンプしてもとても届かない。

「お願い、返して!!」

 私の声に彼らは笑い声をあげるばかりだった。


 私は泣き虫だった。泣きたかった訳では無いのだが、そういう目に遭うと色んな感情で胸がいっぱいになって涙が出てしまうのだ。
 それがいじめっ子たちには面白いらしく、いつも嫌な目に合わされていた。そんな私をいつも助けてくれたのが、幼馴染のジョナサンだった。

─やめるんだ!

 ジョナサンは私の為にいじめっ子たちと戦ってくれた。いつも多勢に無勢で負けてしまうのだが、必ず彼らから私を助けてくれた。ありがとう…そう言うと、彼は紳士を目指す身としては当然だと笑ってくれた。

(でも、甘えすぎは良くない)

 そう思って、私は先日彼にもう助けはいらないと伝えた。


「返してよ!!」

 必死に涙をこらえた。胸の中はグチャグチャになっていたが、それでも私は必死に飛び上がった。

「返して欲しけりゃいつも通りピーピー泣いてみりゃいいんだ!」

「ま、泣いたところで返してやるかは分からねぇけどな!!」

 本を追って手を伸ばした瞬間、足を引っ掛けられ地面に倒れる。体も心ももう限界だった。

(なんでこんなことされなくちゃいけないの…?)

ポロリ、と1粒涙が零れ落ちた時だった。


「なにをしているんだ!」


 聞き慣れた、暖かくて優しい声がした。

「その本はAのだぞ!返せ!!」

 驚く程に強く、有無を言わさぬ声音だった。いつも以上に厳しい声に、彼らも動きを止める。

「き…今日はこの辺で勘弁してやる!」

 そんな捨て台詞を残し、彼らは私の本を投げ捨てて去っていった。


「…A、大丈夫かい?」

 そう言って、ジョナサンが本の砂埃を払って私に差し出す。

「…助けなくていい、って言ったわ」

「あ、そうだった!」

 ジョナサンは焦った顔をしてこちらを見る。

「すまない、迷惑だったかな…」

「迷惑なのは、貴方の方でしょ。ジョナサンは私を助けたって損ばかりだもの」

 そう言うと、彼は困ったように眉を下げる。

「損なんてしてないよ…」

 そう言って、彼ははにかんだ表情を浮かべた。その顔にはほんのりと朱が差している。



「好きな人を助けられるんだから」

後の祭り【イルーゾォ】→←Six feet under【レオーネ・アバッキオ】



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.5/10 (195 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
295人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

りと(プロフ) - ∴さて、どこへ行こうか。さん» リクエストありがとうございます!返品が遅くなってしまい、大変申し訳ありません<(_ _)>リクエストの方、承りました!ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で取り扱わせて頂きたいと思います(^^♪ (2021年8月23日 23時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - ?さん» ?さん、リクエストへの返信が大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした<(_ _)>リクエスト承りました!ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で書かせていただきますヽ(*^^*)ノ (2021年8月12日 0時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - モカさん» 返信がとても遅くなってしまい、申し訳ありません!リクエスト、承りました! (2021年7月19日 22時) (レス) id: b238753ec9 (このIDを非表示/違反報告)
∴さて、どこへ行こうか。 - リクエストです。普段甘えない花京院典明の恋人(夢主)が甘える、という内容なのですがよろしいでしょうか?出来れば生存ifを希望します… (2020年11月6日 19時) (レス) id: a195df0bb5 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - リクエなのですが、露伴先生と病弱な夢主が恋人関係なのですがその病弱な夢主が意外にも悪徳的なスタンドを持っている事を知って何があったのかと聞くと泣きながら過去にあった親からの虐.待などを夢主が語っていき、その日は思う存分甘えされるみたいなのをください! (2020年3月27日 16時) (レス) id: d243ef7454 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:りと | 作成日時:2019年1月9日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。