誰が為に【音石明】リクエスト・チリペッパーさん ページ43
一途に誰かを好きになることなんてないと思っていた。
「…ッ!!……ッ!」
いつも通り、杜王町の商店街でギターをかきならす。
客はまばらだが仕方ない。俺の感性とギターテクが時代を先取りしているから、こんな田舎町の人間には通じないだけだ。集まる客は俺と同じようなロックを愛してるって感じのやつらばかりだし、大体いつものメンツだった。前に俺とバンドを組もうと言ったやつも離れてこちらを見ている。
そんな中で、ふと『そいつ』に目が止まった。
「…!」
キラキラと目を輝かせ、俺のギターを聞いているそいつは初めて見る顔だった。
それに、見た目も明らかに客の中では浮いている。膝下のプリーツスカート、規定通りに着られた制服、長い黒髪はサラサラと彼女が揺れるのに合わせて動いている。いかにも優等生らしい雰囲気のその女に、俺は一瞬目を疑った。あまりにもロックの似合わないその女は、楽しそうに微笑んでいる。俺がギターでアレンジを加えてやれば、その目の輝きは増した。
(なんだこいつ…?)
そうは思ったが、それ以上に俺の演奏を楽しげに聞くそいつが気に入った。俺の客といえば、俺の音楽が好きなのではなくて俺を品定めしに来ているからだ。そんな奴らへの演奏になるのは嫌だったが、そのフラストレーションが俺の演奏の力になった。だが、こうして純粋に俺のギターを聞く客が現れた時、不思議と今まで以上の欲が湧いた。
こいつに本物ってやつを聞かせてやりたい。
こいつに俺の演奏でもっと楽しんで欲しい。
そして、あわよくば俺を好きになって欲しい。
自覚はする気はなかった。初めての客に恋をするなんて、なんだかロックには似合わない気がして認めたくなかった。
だが、ギターを鳴らす度にあいつのあの目が過ぎる。新しいギターのアレンジを見つけたら、あいつの前で成功させたいと思う。商店街でギターをひく度、あいつの姿を探す。あれば嬉しく、なければ物足りない。
そんな日々が続いて2年になった。
(今日もいねぇな)
あの女の姿がしばらくない。体調を崩したのか、どこかへ引っ越したのか。
そんなある日、何気につけてみたテレビを見てギョッとした。
「杜王町の女子高生、行方不明に?今月で3人目!」
そんな見出しがつけられたニュースを見て、あいつの名前はAという事も今知った。ニュースを消した。
今日もAのために商店街でギターを鳴らす。
今日もあいつはいない。
295人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りと(プロフ) - ∴さて、どこへ行こうか。さん» リクエストありがとうございます!返品が遅くなってしまい、大変申し訳ありません<(_ _)>リクエストの方、承りました!ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で取り扱わせて頂きたいと思います(^^♪ (2021年8月23日 23時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - ?さん» ?さん、リクエストへの返信が大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした<(_ _)>リクエスト承りました!ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で書かせていただきますヽ(*^^*)ノ (2021年8月12日 0時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - モカさん» 返信がとても遅くなってしまい、申し訳ありません!リクエスト、承りました! (2021年7月19日 22時) (レス) id: b238753ec9 (このIDを非表示/違反報告)
∴さて、どこへ行こうか。 - リクエストです。普段甘えない花京院典明の恋人(夢主)が甘える、という内容なのですがよろしいでしょうか?出来れば生存ifを希望します… (2020年11月6日 19時) (レス) id: a195df0bb5 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - リクエなのですが、露伴先生と病弱な夢主が恋人関係なのですがその病弱な夢主が意外にも悪徳的なスタンドを持っている事を知って何があったのかと聞くと泣きながら過去にあった親からの虐.待などを夢主が語っていき、その日は思う存分甘えされるみたいなのをください! (2020年3月27日 16時) (レス) id: d243ef7454 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:りと | 作成日時:2019年1月9日 21時