魔界入りした胡蝶の夢3(魔入間+魔d!) (ページ39)

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131.日常への侵蝕ページ39

家族(おうちのひと)から連絡が入ったらしいイルマくんを見送り、本題……トンの話と使い魔の件についての報告を始めた。前者の方はもう既にトントン自身がバラム先生にお礼を言いに来ていたらしいので簡単に流す。

「デビルポークの里を荒らした魔狼、君達のおかげで取り締まられたんだって？」
『そういえば新聞に小さく載ってましたね！これで、里の皆さんも安心でこっちも一安心です』

心からの安堵に和やかに微笑む。が、後者はこうニコニコとして語れるものではなかった。

『それで、私の使い魔の件なんですけど』
「あれ以降何か変わった事はあった？」
『あの日、デビルポークの里に居た日にもう一度あの声が話しかけてきました』

恐らくあの声に与えられた力とその説明を思い出せる限りで復唱する。

「"7発目の弾丸は望ますとも、全てを撃ち抜く"か……童話の"射手と契約した悪魔"の話に似ているね」
『悪魔が射手に必ず狙った所に当たる魔弾の作り方を教える話でしたっけ？銃じゃなくて弓ならバルバトス家の能力に近いような……』
「それには続きがあって、契約内容は6発は射手が狙った場所に、7発目は悪魔の望む場所に当たるというものなんだ」

童話なので解釈によって色々な結末のものがあるが、その中の一つに射手が最後の弾丸で愛する人々すべてを撃ち殺すというものもあるらしい。

『愛する人を撃ち抜いてしまった魔弾の射手……』

そう言い換えると恐怖を具現化している"井戸"が自身のどんな部分を形にしたのか何となく察することが出来た。死蝶さんが誰しもが持つ死への恐怖の具現化だとしたら、彼は愛する誰かを傷つける、傷つけられる恐怖を形にしたようだった。

「"井戸"の生体としては非常に興味深いけど……そのEGOを使ったとき身体の不調や変化はなかった？」
『確か……目元がガッと熱くて、自分が撃ち抜こうとした少し遠くの景色が鮮明に見えました。よく考えれば前に説明してもらった"侵蝕状態"ですねアレ』

あっけらかんとそう言えば、侵蝕状態は魔力面、精神面共に強い負担がかかる事をもう一度説教されそうになる。まぁ大丈夫だったし……と結果論で流そうとしたら精神医学担当のツムル先生に本気で相談されそうになったので慌てて弁解した。

「君といいイルマくんといい……ちゃんと危機感を持つこと！いいね！？」
『はぁい』

大事にされているという実感が、優しく柔らかくて何だかこそばゆかった。