128.違えても変わっても10 ページ36
『わぁ、食材がいっぱい。これ、この辺りでよく採れるものですよね?』
プギ!と肯定と誇りを込めて鳴く彼等の意図を聞くためどうして?と問おうか迷うが、ニュアンスは多少わかるとはいえ言葉が通じない故に言葉に詰まる。
「ん〜……もしかして、トントンへの礼とか?」
肯定するような鳴き声が複数あがり、ゾムと私は顔を合わせ気の抜けたように笑う。その頃には先程まで身体を蝕んでいた恐怖と心配はだいぶ和らいでいた。途中少し遠くから感じた強い魔力は怒りを孕んでいたものの"よく知っている"ものだったから。
準備ができたのかトントン達の居るであろう方向に向かい出すデビルポークたちを追うように、私達も再び雪の降る林を歩き出した。
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「ご、ごめん豚さん!俺たちもう帰るからだけどひとつお願い!!このトントンってやつのことだけは信じてやってくんないかな、魔獣にはめちゃくちゃやさしいねんコイツ」
寄ってくる豚たちにあわあわと弁解するシャオロンの方に近寄る。
「あー、大丈夫やでシャオロン!豚さんたちもう怒ってないっぽい‼」
「ゾム!お前シアと一緒に居ったんか!」
『豚さんたちを避難させたあとに回収してきました』
焦りと緊張が少しずつ安心した表情に変わるのがわかり、大丈夫なことを強調する為にこちらも微笑み返した。なぜだかショッピ先輩はこちらを見て驚いたような顔をして固まっていたが……
「トントンに狼やっつけてくれたお礼がしたいって里の特産品持ってきてくれて……」
「プハーッ!生き返ったァ!!」
「お前の身体どうなっとんねん!!」
魔力を使い果たして飢餓状態だったらしいトントンが豚さんたちが持ってきてくれた食べて復活するのを見て苦笑する。
「ありがとなデビルポークさんたち、散々迷惑かけたのによくしてくれて……これからは安心して暮らしてな」
そう言ってデビルポークを撫でるトントンの後ろからトンが声をかける。言葉はわからないが、その鳴き声はどこか申し訳無さそうで目に涙の膜が貼っている。
「トン……そんなかしこまらんでも、もうわかっとるよ……お前のことだからみんなを危険なことに巻き込みたくなかったんやろ」
プギ……と言葉を返そうとするトンにトントンが言葉を続ける。
「俺がトンとはじめて会ったときなんて言ったか覚えとるか?……"今日から俺たちは一心同体や!!"」
私達は、言葉と同時に召喚されその言葉に泣き出したいつもの姿のトンを暖かい目で眺めていた。
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アスルル - はじめまして〜コメント失礼します。凄い…主人公の感じがほんわりしているようで、しっかり自分を持っているのが良いと思いました。がんばってくださいね。 (9月11日 7時) (レス) @page17 id: 6edaad17fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:郷音豆腐。 | 作成日時:2023年1月16日 15時