Nostalgic Blood ～追懐的な血～ (ページ14)

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Episode101：信用ページ14

【柊静香side】

「まあいい。リビングに戻ろう」

　先を歩く無神ルキを一瞥し、用意された自分の部屋に荷物を置いた。この家は広くて迷っても困るので、急いで置いておいたけれど、その一瞬に見えた部屋は大きく、ほかの部屋はどんな感じなのかはわからないけれど、あたしの部屋は青を基調としたさっぱりとした部屋だった。壁際にあるベッドにも青い布団がのっていて寝心地がよさそうに感じた。

「莉緒も荷物置いておいたら？邪魔になるでしょう…ってもう置いてたのね。さすが、仕事が早いわ」

「ふっふふん。もちろんだよ～？私の部屋めっちゃ真っ白な感じだった」

「あら、真っ白だったの？あたしは青色だったわ」

　先に無神ルキが降りてしまっていたのだろう、無神コウが”はやく～”と呼びに来た。

__

あたしは裕福な家庭で育った。
大きな家、きれいな庭、幸せそうな両親、優しい使用人。
そう、『幸せ』。
幸せで一杯の家庭。誰が見ても羨むそんな幸せ。
あたしも自慢だったし、幸せだった。

昔からこう性格が悪かったわけでもない。
よく言われたものだ、

「静香ちゃんってかわいくておかねもちなのにやさしいよねー！いがい！」

と。
そりゃあ嫌いでもない人に意地悪をするわけがない。
面倒くさいし、そもそも何の利益もない。

性格は悪くない。
悪くないが、昔から利益や損得を考えることが多かった。
だからあたしという可愛くない子供が出来たのだろう。

もちろん両親はかわいがってくれたし、あたしも両親がだいすきだ。

でも、ある日幸せを不幸のどん底に落された。

屋敷を襲う無数の人間の形をした怪物(吸血鬼)だ。
使用人の人に飛びついて、噛み付き、血を啜る。
叫び声と怒号と泣き声が飛び交い、地面や家の床には真っ赤なモノが飛び散っていく。

「っ、静香…！！逃げ、て…逃げなさい！」

「いやだ！！お母さん！お母さん！」

母の上にのっかって血を貪っている化け物は
恍惚とした表情で口の周りをどんどん汚していく。
母の血で。

母のそばにある父の遺体。

なんでこうなった。
無数の化け物が徘徊する愛する我が家を捨て、あたしは独りになった。

いろんな親戚の家を転々として、ある日、莉緒に会う。
…互いを利用し、利用され、信頼ではなく信用する関係を築いた。

信じて頼る。それだけじゃない、それでは意味がない。
確かなものと信じて受け入れる。
あたしを受け入れてくれた莉緒をあたしは受け入れるのだ。