君に捧ぐ声と歌。【黄】【stpr】 (ページ5)

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得意気な表情を見て、まず思い浮かべたのが、すとぷりの「るぅと」を心配してきた説。

それが本当ならば、るぅとの正体がばれていることになる。

「一つ目の理由は、会いに来るって言ったくせに全く会いに来てくれないから!!私から会いに来たって訳」

「...もう一つは?」

「もう一つは＿」

Aが笑った。

「ここに行こう、一緒に!!」

そこには、東京にある"ドリームアクア遊園地"。

大人気のアトラクションなどを取り揃えており、チケット入手が困難で...

って。

「なんで持ってるんですか!?」

田舎者が簡単に取れるようなチケットじゃないんだけど...

「福引き券をおばさんに貰ってさ、引いたら出てきた。二枚だったから夫婦で行ってくださいって言ったんだけど、折角だからAちゃんが行きなさいって断られちゃって」

それでるぅと君しかいないな!!って事でるぅとくん、とAが笑った。

「....なんで、僕なんですか？」

中学卒業から会っていないが、彼女は以前より明るく笑顔が増えたような気がする。

だから、他の人を誘えばいいのに。

Aは、化粧直しに洗面だい借りるよ～、と言って立ち上がり、そして言った。

「だって、地元で誘えるのがるぅと君くらいしかいないもん。知ってるでしょ？」

淡々と言い放たれて、思わず息が詰まる。

何も言えずに居ると、ピッと髪を掴まれた。

「痛いです、なにするんですか!?」

「寝癖男に言われたくないしー」

結局一緒に洗面台に向かった。

鏡越しにチラリとAを見る。

何もなかったようなその顔の奥で、まだ何か悩んでいるのかと、心配になる。

ふと、Aと目があった。

「君のために声を紡ぐ生涯をかけて」

彼女の口からよみどみなく流れた音に、思わず寝癖を直す手を止めた。

にやりとAが笑って、話出す。

「るぅと君が作詞作曲してくれた歌だよね、私がるぅと君の上京を引き留めてたとき」

＿嫌だ、行かないでよるぅと君!

泣き叫ぶAを見て、気づいたら、人生ではじめて作詞作曲した曲を歌っていた.

といっても、ただの数文だが.

＿また会いに来てくれる？約束しよう

泣き笑いになった彼女と交わした指切り。

僕が歌い手になる一番のきっかけをくれたのは彼女だったのに、いつしか忘れてしまっていた記憶。

＿僕、これからも歌作りますから

最後にそう言って新幹線に乗った。

でも、これからはもう、無いのかもしれない。