幸せを君に２

ジェントルマン ページ33

朝、仕事に出かける北山さんをいつも通り見送って、いつぶりかわからないくらい化粧をする。
北山さんの家でお世話になり始めてから外へ出かけることはほとんどないから化粧をすることもない。
オシャレな服も元々そんなに持っていないのでとりあえずジーンズとパーカーチュニックを着る。
準備が出来て、時間を確認すると約束の時間の三十分前。
待ってる時間が落ち着かなくて、リビングだけでもと思い、掃除機をかける。
約束の時間になり、家を出る準備をしていると携帯が鳴った。


「もしもし。」


F「あ、もしもし、藤ヶ谷です。マンションの前に着いたよ。」


「わかりました。今から降ります。」


F「待ってます。ゆっくりでいいからね。」


電話越しの藤ヶ谷さんの声はいつも優しくて甘い。
耳がくすぐったくなる。
私がエントランスを出ると車から降りてきてくれて、助手席の扉を開けてくれる。
そして私が乗るとゆっくりと閉めてくれる。
こんなこと、今までしてもらったことなんてもちろんなくて自分がお姫様になったかのような扱いに戸惑う。
藤ヶ谷さんはとても紳士的な人なんだなと思う。
北山さんと一緒に見た番組のプロポーズと、その時に北山さんが言っていた藤ヶ谷さんはキングだから、という発言を思い出した。

藤ヶ谷さんの紳士っぷりはその後も…
ランチを食べようと訪れたオシャレなカフェに着くと車の扉だけではなく、店の扉も開けてくれ、メニューを私が見やすいように向けてくれたり、スマートに注文してくれたりと本当に至れり尽くせり
という感じ。


F「この後のことなんだけど、どこか行きたいところある？」


「えと…すみません、考えてなかったです…」


F「そっかそっか！じゃあショッピングに付き合ってくれない？」


「はい。」


F「そろそろ服買いたくってさ。」


そう言って優しく微笑む藤ヶ谷さん。
北山さんの笑顔も安心できるけど、藤ヶ谷さんの笑顔も安心できる。
こんなにも優しい男性がいるなんて、私は今まで知らなかった。

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