幸せを君に

逆戻り ページ42

あれから…

北山さんの家から逃げるように帰って、北山さんの電話に出ることをやめたあの日から…


私は仕事場である動物園と、家の一番近くのスーパーにしか行かなくなった。

気持ちもずっと落ち込んでいるような、何もしたくないような、無気力な感じになってしまって、これじゃああの人から逃げてきた時の私に逆戻りじゃないかと思ってまたさらに落ち込む。


動物園の仕事に慣れて、楓先輩や園長に優しくしてもらって、やっと少し笑えるようになってきたと思っていたところだったのに…


これじゃあの頃と変わらない。



今日も仕事が終わって、楓先輩と少しだけ話してからまっすぐ家に帰る。

楓先輩も最近の私は元気がないと心配してくれている。
それも申し訳なくて何とか取り繕おうと努力してみてもたぶん無理してるのはばれてると思う。

でも楓先輩はそのことにあまり触れない。
何があったの？と一度聞いてくれた時に私が言いにくそうにしてるのを見て、言いたくなったらでいいよって優しく言ってくれた。
そこからはこれまでとそんなに変わらずに接してくれるからありがたい。




楓先輩に挨拶をして動物園を出る。
自分の家に向かって歩き始めて少ししたところに見たことのある車が停まっているのを見つけた。



どうして…？




私が立ち止まると車のドアが開く。







私が動けないでいると車から降りてきたその人はどんどん私に近づいてくる。






逃げなきゃ。


そう思っても後ずさりをすることしかできない。




？「逃げるなよ。」




「……や……来ないで……」




？「会いたかったよ。」




そう言って腕を掴まれたところで私は意識を失った。

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