宇髄天元 ページ9
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「どうだ、体の調子は?」
「随分と良くなりました」
「それはよかった」
男はそう言うと、私の隣に胡座をかく。
肩幅、上腕、胸筋など、鍛え上げられた体躯。
傷一つない肌に、透き通る白銀の髪色、まるでルビーの宝石を嵌め込んだ様な瞳。
そして、左目に描かれたそれ(化粧?)が彼を映えさせる。
改めて見ると…もっの凄く綺麗な人だなぁ。
綺麗な人は好きだ。
それは、血肉が美味いから。
外見、心…どちらでもいい。兎に角、人間《綺麗な一部》を持ち合わせていたら心做しか、その一部が美味しく感じるのだ。
だから、あの女性三人も彼も美味い、と断定できる。
「助けて頂きありがとうございます」
けど、彼らは一応私の恩人だ。喰うにはまだ早い。
目の前の男は、私の言葉に微笑むと口を開いた。
「それはそうと、お前の故郷はどこだ?親兄弟とか知り合いとか、誰かしら心配してるだろ。そこまでこの俺様が、派手に送ってってやるよ」
………派手に送るとは?
私は頭を悩ます。多分だけど、あの鬼の件から考えるに…多分だけど、ないと思うけど、この世界は、私の知っている世界とは違うような気がする。
いや、気がするだけだから、勘だから、、、
「親も知り合いも、私にはいません」
「……そうか」
さっきの元気は何処へやら、彼はそれだけ言うと口を閉じ、何かを考え始めた。
さて、私はというとこれからどうしようか。此処が私の知らない世界だと仮定して、そんな右も左も分からないような所で、安易に人を喰う事はできない。騒ぎはできるだけ避けたいからね、あと疑わられるのは勘弁。
私が頭を悩ませている中、「ならよー、」と男が再度口を開く。
「お前、俺の継子になるか?」
「継子、ですか?」
「ああ。そしたら衣食住、俺が面倒みてやるよ」
「どうする?」と私に問いかける。
………悩んでも仕方ない、か。
「よろしくお願いします」
私は頭を下げる。男は「おう!」とだけ言うと、急に立ち上がった。
「それはそうと、お前名前なんていうの?」
「Aです、ただのA」
「Aか、俺は《宇髄天元》だ!」
この見た目が派手な男は、宇髄天元というらしい。
「継子か〜!一度はもってみたかったんだよな、弟子ってやつ?腕がなるぜ!!これからビシバシお前を鍛え上げて上弦の鬼にも勝る隊士にしてやるぜ!!」
彼の熱い想いに、私の頬が見えない糸で引っ張られる。
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アゲハ(プロフ) - あくわいさん» 私の誤字でした。ご指摘感謝します。 (2022年1月9日 20時) (レス) id: 6f074cf7a7 (このIDを非表示/違反報告)
あくわい - あの………凄く言いにくいんですけど………多分「ツテ」じゃなくて「ツケ」だと思うので………一応調べてみてください……… (2022年1月9日 18時) (レス) id: d8c2d43c86 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アゲハ | 作成日時:2022年1月3日 12時