【実況者】恋愛恐怖症【ky】

Part42 ページ43

「大丈夫だぞ〜A。大丈夫。大丈夫。」


兄は祈るような気持ちを表情と言葉で表しながら私の背中をさする。



私が過呼吸を起こしていることに気づいた兄は素早い対応で紙袋を用意し私をソファまで抱えて運んでくれた。


今は兄の膝に頭を置いて袋を抱えて横たわっている。



兄のおかげではじめよりはだいぶ落ち着き、数分もすれば症状はおさまった。



『お兄ちゃんごめん。びっくりさせたね。』



「ビックリはした。死ぬかと思った。無事でよかった。」



何があってあんなことになったんだよ。と遠慮がちに聞く兄。
私はたつきくんからのLINEを見せ、ちょっと思い出して辛くなってしまったという事を話した。


兄はスマホの画面を見ながら眉をひそめた。



「お前は返さなくていい。むしろブロックしとけ。



『でも…』


私は戸惑う。
人と縁を切ることはあまり得意ではない。
人生いつ関わらなければならない時が来るかわからないし
縁を切るほど人を嫌ったことがないからだ。
だが兄は口調を強めて言う。



「でもじゃなくて。ブロックしとけ。もう見てられねぇぞさっきみたいなお前。」


『そっか…わかった。ごめんね。』



兄にこれ以上迷惑をかける訳にはいかない。
私はたつきくんのアカウントをブロックした。



するとまた鳴る通知音。
思わず肩をビクつかせてしまった。
部屋に戻ろうとしていた兄も振り返る。


キヨさん明後日の夜行きます。



相手はキヨさんだった。
自然と心が安心に包まれるのがわかった。



『キヨさん、明後日の夜来るって。』



「あいつ俺に連絡しろっての(笑)」


兄は笑いながら部屋に戻っていった。
私は何か甘いものが食べたくなったため、コンビニに向かうことにした。


兄になにかいるか聞こうと部屋を訪ねようとしたところ
ドア越しに兄は誰かと話をしていた。



実況を取り始めたのか、通話をしているのか
また撮影中に入ってしまうのはゴメンだと思い
そっと少しだけドアを開けた。


部屋の中からは怒りの篭もった兄の声が聞こえてきた。



「お前さ、この期に及んでなんなわけ？いい加減にしてくんない？A混乱して過呼吸起こしたんだわ。」



その内容で兄の話し相手はたつきくんだということがわかった。


ーー「お前は返さなくていい」
ってそういうことだったんだ…。



「二度とAに連絡してくんなよ。」



怒りの篭もった声で伝える兄に感謝しながら
私はコンビニへ向かった。

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